産学官連携でM&A業界を活性化 日本M&Aセンターホールディングスが「M&A研究・産学官連携推進室」発足

 日本国内では、中堅・中小企業経営者の高齢化が進み、2025年には後継者不在の約60万社が黒字廃業の危機にさらされるといわれている。事業承継・企業の成長の手段としてM&A(企業・事業の合併や買収)の件数が増加し、M&A専門業者の数も急増。中小企業庁の登録M&A支援機関数は2900件を超え、支援の質等の課題も顕在化してきている。そのような課題に対応するため、中小企業庁は、事業承継税制や事業承継・引継ぎ支援センター等を通じ円滑な事業承継を推進しているほか、中小企業のM&Aに対する適切な支援を実現するため、2023年9月に中小M&Aガイドライン(第2版)を公表している。

 M&A業界全体が過渡期にある中、日本M&Aセンターホールディングス (東京)は、産学官の連携によってM&A仲介業界を発展させていくことを目指し、「M&A研究・産学官連携推進室」を2024年1月1日付で発足する。同社の社長直轄の専門組織として設置することで、M&Aの研究や産学官の綿密な連携をより本格的に推進していく。M&Aや事業承継、企業評価、税務、法務、PMI、データマネジメント、マーケティング等さまざまな領域の専門家・プロフェッショナル10人超のメンバーを中心に、業界のリーディングカンパニーとして、業界全体の発展に取り組んでいく。

 M&A支援における課題については、業界自主規制団体であるM&A仲介協会 (東京)も、M&A仲介業界のあるべき姿を倫理規程として定め、広告・営業、コンプライアンス、契約重要事項説明というM&A支援における重要な3つの領域における自主規制ルールを策定。日本M&Aセンターホールディングスの連結子会社である日本M&Aセンター (東京)も、M&A仲介協会幹事会員として知見やノウハウの提供等策定に協力している。

 一方で、中小M&Aは成約後も公表されないことが大半で、学術的研究が進んでいない領域でもある。日本M&Aセンターホールディングスは、中小M&Aの理論の確立や業界の発展に向け、2022年9月に神戸大学大学院経営学研究科と産学連携協定を締結。中小M&A研究教育センター(MAREC)設置や共同研究・研究助成の実施、シンポジウム開催、連携大学院等などの取り組みを行ってきた。今後、「M&A研究・産学官連携推進室」発足により、共同研究の深化や共同出版、学会設立や他大学との連携を行い、アカデミア連携を加速させていく。

 M&A研究・産学官連携推進室 室長に就任する横井伸氏(日本M&Aセンター法務部長・神戸大学大学院経営学研究科 客員教授)は、「中小M&A業界の質とモラルを向上させ、公正な取引ルールを業界全体に普及させていくためには、産(業界団体の発展と適切な自主規制の取り組みへの参加)・学(アカデミアによる学術面からの中小M&A研究・政策提言)・官(行政によるM&Aガイドラインの趣旨の業界への徹底)の三位一体の取り組みが不可欠。本組織の発足により、従来ばらばらに存在した業界団体の取り組み・行政の取り組み・アカデミアの取り組みの趣旨を統合し、新たな時代の中小M&A業界のスタンダードを作るべく尽力していく」とのコメントを寄せている。

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