リモートワークやノマドワークも市民権を得て、これまでパソコンは支給品しか使ってこなかったけど、自分で買う機会が増えたという方も多いと思います。製品を選ぶときのポイントをご紹介します。
- PCを比較するときに何を見るか
今のパソコンの品質はバランスが取れています。店頭に行ってお店の人のおまかせで購入しても、販売サイトで運任せにえいやっと購入しても、大外れを引くことはないかもしれません。オフィスソフトを利用する程度であれば、きっとサクサク動いてくれることでしょう。
ただし、リモートワークなどで増えているリモート会議システムを使ったり、プレゼン用に動画の編集を考えている場合などは注意が必要です。動画編集に高い性能が要求されることは認識が広まっていますが、リモート会議システムもCPU、GPU(画像処理装置)、メモリー、ストレージ、通信システムにかなり負荷をかけてきます。
カタログなどを元に製品の比較ができるように、主要要素を確認していきましょう。
- 速ければ高いCPU
CPUは中央演算装置のことで、コンピューターの要です。性能は一般的に動作周波数(1秒間に何回計算できるか)で表されます。速ければ速いほどよいと言われていますが、速いものは高いし、出先で頻繁に使うモバイルPCの場合、速いがゆえに電池を大食いすることもあるので、何に使うかを見極めて選択しましょう。高性能なのはうれしいですが、ゆえに熱くなって膝の上に置いて作業するのが苦痛になったり、放熱するために筐体(きょうたい)が大きくなったり、ファンががんがん回ってうるさくなったりすることはあります。
また、周波数によらず、性能を見極める指標も提供されています。例えば、インテル製のCPUであれば、i3、i5、i7などの標記がありますが、i3はエントリー向け、i5は標準的、i7は高性能版、i9は最上位モデルです。
ただしこれも絶対的なものではなく、電力を使いたい放題の標準的なCPUが、モバイルPC用に低電圧で提供されている高性能CPUを上回る性能をたたき出すことなどがあります。
ノートPCの場合、大型でいつも電源につないで使いそうなモデルには電力を惜しみなく使うCPUが、モバイルモデルには低電圧版が搭載されていることが多いので、自分の用途に合わせて選択してください。
頻繁に新製品が投入される分野でもありますので、3世代前のi7より、最新世代のi3の方が優秀かもしれません。
こうしたCPUの細かい特性などは型番で表されていますが、表記の仕方がころころ変わるのでメーカーのウェブページなどで世代も含めて確認しましょう。
その他にCPUの性能を表す指標として、ベンチマークテストがあります。パソコンに負荷のかかる仕事をさせて、どのくらいのパフォーマンスを発揮するかを数値化するものです。CPU単体のベンチマークもあれば、パソコン全体の性能を試すベンチマークもあります。
レビュアーなどが各メーカー、各モデルのベンチマークを公開していることがあるので、参考にするのもよいでしょう。しかし、あくまでテストの結果なので、自分の使い方と合致しているかどうかは分かりません。ベンチマークの結果はとてもよかったのに、自分の環境では力を発揮しないケースはあるので、細かい数値に一喜一憂する必要はありません。
【著者略歴】
岡嶋 裕史(おかじま ゆうし) 中央大学国際情報学部教授/政策文化総合研究所所長。富士総合研究所、関東学院大学情報科学センター所長を経て現職。著書多数。近著に「思考からの逃走」「プログラミング/システム」(日本経済新聞出版)、「インターネットというリアル」(ミネルヴァ書房)、「メタバースとは何か」「Web3とは何か」(光文社新書)など。