東京大大学院農学生命科学研究科(東京都文京区)と積水ハウス(大阪市)はこのほど、生物多様性と健康に関する共同研究を開始した。庭の緑など都市の自然環境や生物多様性が、都市住民の健康・幸せにどのような効果をもたらすのかを、大規模に検証するという。
農学生命科学研究科の生圏システム学専攻保全生態学研究室は、2016年から緑と健康の関係について研究しており、緑とのふれあいが人の健康促進と関連するという結果を得ている。積水ハウスは2001年から、地域の在来樹種を生かした庭づくり・まちづくりを提唱し、都市の住宅地にネットワーク型の緑地を作って生物多様性保全を推進。こうした取り組みで蓄積した全国の植栽データを保有する。
今回の共同研究では、東京大大学院の分析手法と、積水ハウスの生物多様性保全の取り組み・データを組み合わせ、「単なる緑」ではなく「生物多様性の豊かな庭の緑」の重要性を確認することなどを目指している。このような「生物多様性の豊かな庭の緑」が「人の健康・幸せ」にどのような影響を与えるかを科学的に検証する研究は、世界初だという。
東大大学院農学生命科学研究科の曽我昌史さんは「人は古来より自然に癒やしや安らぎを求めてきたと思うが、近年の研究・技術の進展によって、こうした目には見えない健康便益が定量化できるようになってきた。しかし、こうした健康便益が供給される過程で生物多様性が果たす役割はほとんど分かっていない。この役割が解明されれば、生物多様性保全と人の健康の双方にとって望ましい自然共生型の景観・緑地管理が達成できるかもしれない」と話している。