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「書評」 「食料・農業・農村基本法」見直しは「穴」だらけ!?  金子勝・武本俊彦

 2024年5月に国会で可決・成立し6月に施行された改正基本法について、経済学者の金子勝慶応大学名誉教授と元農水省官僚の武本俊彦元新潟食料農業大学教授が、理論と政策の両面から問題点を指摘する。

 2人は、改正前の農政の検証が不十分で、他省庁を巻き込まず農水省だけで改正を急いだ経緯を批判している。その上で、経営規模の拡大で農業の生産性の向上を目指す政策に偏重し、農山漁村政策が不十分だと指摘し、「人口減少が激しく農村コミュニティの崩壊を止められなくなる」と警告する。

 対案として、武本元教授は、農業生産から加工・流通を通じた消費までを一体としてとらえる「食料システム」の発想が不可欠だと指摘し、市場メカニズムが機能するような「食と農をつなぐ制度」の整備が必要だと提言する。

 金子名誉教授は、適正な価格形成を法制化するには限界があり「生産から消費までつなぐシステムがきちんと機能させられるのは生協をはじめとする協同組合であり、そうした仕事は政府にはできない」と断じ、「食」の価値を正当に評価できる生活協同組合の役割に強く期待する。

 改正基本法に対する様様な批判に対して、政府は同法に基づいて来春までに策定する中期指針食料・農業・農村基本計画の中で個別に対応していく姿勢を示しているが、本書は基本法の根本的な問題点を指摘しており、再改正は不可避だという思いが強くなる。筑波書房ブックレットとして発行、税込み990円。


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