国際総合ファームEYが東京都内で9月11日開いた、日本経済の重要テーマをEYの専門家が解説する記者説明会には約60人の記者らが参加し、人工知能(AI)や経済安全保障、アクティビスト(物言う株主)分野の各専門家が伝える最新動向や背景情報に耳を傾けた。
中でも経済安全保障の専門家である、EYストラテジー・アンド・コンサルティング(東京都千代田区、EYSC)の國分俊史さんの報告は、先端技術の覇権をめぐる米中対立の渦の中で、具体的な解決策を求められる経済安保コンサルティングビジネスの具体的な実情に言及して関心を集めた。
説明会の冒頭、あいさつしたEY Asia East / Japanクライアント・アンド・インダストリー・リーダー喜多和人さんは「各業界の経営者と対話する中で強く感じていることの一つは、日本企業はいま歴史的な転換点にあるということ。従前の踏襲では対処できない大きな課題が数多く経営課題として上がっている」と述べ、この日取り上げた三つのテーマは、いずれも日本の経営層が強い関心を向けている課題である、との認識を示した。

EYSCでチーフ・エコノミック・セキュリティ・オフィサー兼ストラテジックインパクトリーダーパートナーを務める國分さんは「地政学リスクを生き抜く企業変革の最前線」と題し、約20分間話した。最初に強調したのは、経済安保を巡る政府への「政策提言」と企業への「コンサルティング」の違い。
この両者の違いを國分さんは、「中国製品」の輸入規制を米国が強めている近年の事例を使って説明。日本の輸入規制の在り方はどうあるべきかを議論するのが「政策提言」、一方「中国メーカーの人型ロボットを使って日本企業が生産した製品が米国の輸入規制対象製品になるかどうかの議論をあらかじめ行い、そういう生産工場を作るべきかどうか、先手を打って企業に具体的な解決策を提供する」のが「コンサルティング」とした。
また米国政府の対米外国投資委員会(CFIUS)が対中国リスク分析に使うデータベース「WireScreen」(中国企業1000万~2000万社、経済スパイリスク人材2000万人の情報を収録)の分析レベルの高さを紹介。日本の先進企業の一部は「米国政府やCFIUSがどのような情報・分析を用いてリスク評価を行っているかを把握し、自社のリスク管理体制を高度化するため、このデータベースを導入している」と話した。
その上で、このデータベースの日本での販売権を持つEYSCは顧客企業に対して、産業スパイを摘発する米国のFBI(連邦捜査局)と連携した通報の仕組みを「社内に作り上げるようクライアント(顧客)企業にコンサルティング(助言)している。これが現在の(経済安保コンサルの)現実」と述べた。
さらに「有事」を想定した企業のBCP(事業継続計画)の在り方にも言及し、米国シンクタンクらが公開した「台湾有事」の図上演習で、横田、厚木、横須賀、岩国、佐世保、嘉手納の在日米軍基地がまず攻撃される想定に対応したBCPの在りに関わるコンサルティングの一例も紹介した。
「これらの本土攻撃が想定される地域から半径10キロ以上離れたところに倉庫や工場を移設させるなど、一部の先進企業は本土攻撃を前提としたBCPに取り組んでいる」と述べるとともに、「台湾有事が起きた際にもうける戦略=ショック・ドクトリンストラテジーをつくり、台湾有事の際に競合社を出し抜き、企業価値つまり株価を上げることまで企業の一部は踏み込んでいる」と有事想定のBCPを巡る現下の経済安保コンサルティングの舞台裏の現実の一端を明かした。

そのほか、生産拠点を中国から他国に順次移転させる動きを見せる米アップルが、iPhone14を修理しやすい設計にした背景に「中国依存を削減する経済安保の目的もある」と米シンクタンクの見解を紹介。今後は経済安保の観点から、外部からの新たな部品の調達を不要とする、新品同様の性能に再生させた中古部品を数多く用いる製品生産モデル(リマニュファクチャリング)が広がる可能性を指摘した。
仮にこの生産モデルが世界の製造現場に普及した場合、日本の部品産業は縮小し「日本のGDP(国内総生産)は1.7%、およそ9兆円余りが減少する可能性がある」とも語った。
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