農業分野における外国人材数が過去最高に達した。厚生労働省によると、技能実習生や特定技能など約5万8千人(2024年)が農業分野に従事している。日本人による基幹的農業者数の大幅な減少とは対照的だ。23年に116万人だった基幹的農業者数は、40年には30万人程度にまで減るといわれている。農業が生産力を維持するには、さらなる外国人材の登用が不可欠になるだろう。
外国人材を活用する農業経営者に共通する点がある。外国人材を、単に“日本人の代わり”だと捉えていないことだ。福島県で果樹栽培をする法人は、24年から初の外国人材をミャンマーから迎え入れた。真面目な仕事ぶりが日本人スタッフによい刺激を与えているそうだ。「日本と異なる環境で生まれ育った外国人材が来たことで、日本人の視野が広がった。想定外だった」と経営者は言う。
長野県で露地野菜を栽培する農業法人は、現在、特定人材として働いている外国人を、将来は農場長として抜擢(ばってき)する計画だという。日本人以上に仕事へのモチベーションが高いためだ。農場長になれば、日本人スタッフを管理していくことになる。来たるべきその日を想定し、法人の経営者は、外国人材と協調できる日本人スタッフを配置するなど採用計画そのものを見直すことも考えている。
外国人材の「育成」に乗り出した農業経営者もいる。茨城県の佐々木俊一さんは、常時雇用者として8人の外国人材を活用し、イチゴ、小松菜、サツマイモを生産している。イチゴが繁忙期になる冬季は、さらに2人を雇用している。インドネシアの特定人材を農家に紹介する企業、JMD(埼玉県)を通じ、イチゴの収穫時期だけ雇用している。この2人は春から秋にかけて、同社の紹介で、栃木県の別の農場で野菜生産に携わる。
佐々木さんは、農場で働く外国人材が「言われた作業をこなす」から「自ら気づく」姿勢を持ってもらえればと期待している。すでに、小松菜の仕事の流れを説明した後、基本的な作業を任せるようにしているそうだ。「任された側に責任感が生まれ、率先して気づくようになる」と佐々木さん。気づき、気配りといえば、日本人らしい感性だ。仮に彼らが日本に永住するとなれば、身に付けることはメリットとなる。また母国に帰ることになっても、「日本で学んだこと」として社会で生かされる日が来るかもしれない。
賃金が高い都市に立地していない農業は外国人材に「選ばれにくい」イメージがある。だが、生産現場では日本人と外国人の垣根を超えて融合し、目指すべき共生社会を築こうとする動きがみられる。変化しつつある農業現場に学ぶべき点は多い。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.9からの転載】