国連が1975年の国際婦人年に3月8日を「国際女性デー」と定めてから今年で50年。誰もが輝ける社会づくりを提唱することを目的に、関東の7新聞社(茨城新聞社・神奈川新聞社・埼玉新聞社・下野新聞社・上毛新聞社・千葉日報社・山梨日日新聞社)と株式会社共同通信社の共催で、国際女性デー50周年企画「フューチャーセッション 誰もが輝いて働く社会へ」を、2月6日に東京都内の共同通信社本社で開催した。関東7都県の企業から、人事やダイバーシティ推進担当者など26社44人が参加した。
基調講演は、株式会社SDGインパクトジャパン代表取締役 Co CEOの小木曽麻里氏による「DE&Iの現在地とこれから」。小木曽氏は、社会の「多様性」「公平性」「包括性」を高めるための対策「DE&I」(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)にアメリカで“逆風”が起きている現状を伝えた。

2023年6月に、大学入試において人種を考慮した積極的差別是正措置を違憲とする米連邦最高裁の判決が出た。これを契機に企業は訴訟リスクに敏感になり、「DE&I」の用語使用や、「働きやすさランキング」などへの参加の取りやめ、従業員への人種平等研修の見直し、LGBTQスポンサーからの撤退などの動きが出ている。一方、シンクタンクの調査では、ジェンダー平等指数参加企業が過去最高の1400社に達する見込みであることや、成人被雇用者の56%がDEIへのフォーカスは好ましいと回答しているという結果もあり、考え方の“割れ”が顕在化しているという。
小木曽氏は、「“全ての人が最大限の能力を発揮できる社会”を目指すのがDE&Iの基本理念であり、基本的人権の観点からも、企業価値を向上させるという経済的観点からも、少子高齢化の日本も取り組まなければいけない課題だ」と指摘。日本のジェンダー平等がなかなか進まない背景には、いまだ根強く残る男性・女性はこうあるべきという社会規範、性差への無意識の偏見、同じ属性の方が楽という心理、人数を割り当てるクオータ制への強いアレルギー反応などがあることを解説した。
多様性を推進するための企業の課題としては、「リーダーシップ」「戦略」「対話」「ビジネス機会ととらえる」「諦めない」の5つを挙げた。そして参加者たちに、「日本の多様性は、非常にゆっくりと進んでいる状況。もっと速く進めていくために何ができるのか、今日ぜひ皆さんに議論して持ち帰っていただきたい」と呼び掛けた。
グループワークは、株式会社フューチャーセッションズ(東京)が提唱する「フューチャーセッション」の形式で進行した。同社代表取締役の有福英幸氏は、「未来に向かってどう進んでいくか皆のアイデアを出し合って共創していく」という「未来思考」の考え方を解説。参加者たちは4~5人のグループに分かれ、「ありたい姿(フューチャー)のために企業ができるアイデア」を議論。20分ごとの議論の後にメンバー入れ替えを2回繰り返し、より多くの参加者と対話する形式を取った。

あるグループでは、“性差からの無意識の偏見”“性差による機会の不平等”などが話題の中心となった。「ルールにがんじがらめになるのはよくないが、ある程度のルールを作ることは環境作りにつながるのではないか」「経営層がシニア世代の場合、その理解を得られなければ現状は変わらない」などの意見や、「仕事上の経験や学びの場が、女性は制約をどうしても受ける場面がある」「女性の立場として、責任を負いたくはないけれど権利は主張したいというスタンスの人もいるのが現実」などの葛藤も聞かれた。
グループワーク終了後、参加者全員が、議論を通して自分が組織で取り組みたいと思ったことを「アクション宣言」としてA4サイズの紙にマジックで書き出した。ある女性は、「組織の枠を超えたDE&Iタスクフォースを作りたい」と宣言。「現在、DE&Iに取り組む部署に所属しているが、少人数の女性だけであれこれ考えながらやっている。もっと全体に対して一緒に取り組む人を募ったり、部門や組織を超えて取り組んでいけたりしたらすてきだなと思った」と話した。他にも、「シニア世代との対話の中で、“今世の中はこういう現状だ”ということを伝えていきたい」「立場が下の人も意見を言いやすい会議のグラウンドルールを作り、フリー・フラットの関係を作りたい」などの意見が出た。小木曽氏は、「今日、組織を超えてつながった人と今後もつながっていってほしい。対話を通して発言力のある人の存在に気付き、味方になってもらうことも大事。皆さんに頑張っていただきたい」とエールを送った。
参加者たちからは「基調講演での『女性が登用されても発言しなければ意味がない』との話が非常に心に刺さった」「外資系企業と日本の大手企業、中小企業ではまったく状況が異なり、自分たちの環境は自分たち自身で変えていかなければならないと痛感した」「参加者がセッション後に、自分が取り組んでみたいアクションについて、イキイキと話す姿が印象的で、対話の重要性を感じた」などの感想が寄せられた。
