社会課題の解決に寄与する活動・研究に対して毎年度助成金を贈呈している大同生命厚生事業団(大阪市)はこのほど、2024年度に助成する活動・研究を決めた。同事業団創設50周年を迎える節目の24年度は過去最高の155件の活動・研究に助成する。155件合わせた助成金の総額は2200万円。
関東地区からは、重い障害がある子たちに七五三体験を提供する取り組みや不登校・ひきこもりの子どもたちの学習支援活動、高齢者の健康を考えた食生活の普及を目指す管理栄養士の研究など、多様な社会貢献活動・研究が助成対象に選ばれた。
東京都内のホテルで9月24日開かれた、関東地区の助成金受贈者31人(団体代表22人、研究者ら個人9人)が出席した「助成金贈呈式」で一人一人に贈呈状を手渡した大同生命厚生事業団の工藤稔理事長は、「超高齢社会の医療介護をはじめ障害者と健常者の共生や子どもの貧困・虐待など、日本が抱える課題を解決する保険・医療・福祉・ボランティアの活動が重要になっている。事業団はこれまで以上に助成に取り組み、豊かで明るい社会づくりに貢献したい」とあいさつした。
助成金10万円の贈呈が決まった、NPO法人きもの縁ブレイスは、自力での移動や言語でのコミュニケ―ションが難しい重い障害のある子をはじめ、何らかの理由で七五三を行うことが難しいとされる子どもたちに、晴れ着での七五三の祝福機会を無料で提供する取り組みを2021年から始めた。これまでに障害がある4人の子の七五三を行い、保護者と共にその子の成長を祝ってきた。晴れ着の着物を当人の障害の状態に合わせて仕立てを調整するほか、着付けの際に子どもの体に負担がかからないように、きもの縁ブレイスのメンバーである複数の小児科医や看護師と事前に綿密な打ち合わせをして、細心の注意を払って着付けを行っている。
きもの縁ブレイスの代表理事で、東京都内などで着物サロンや着付け教室も経営する呉服店4代目の澤山綾子さんは「カメラマンも含め原則3人態勢で、病院などの施設やご自宅に出向き、七五三のお祝いをボランティアで行っています。テレビで重い障害のある子どもたちの生活を見て、この子どもたちのために何が私にできるのだろうかと考え、私の仕事に関係する七五三のプロデュースを思いつきました。晴れ着の着付け中に、自分では体を動かせない3歳の女の子の瞳から涙が頬を伝うのを見ました。言語コミュニケーションが難しい女の子の涙は、七五三のお祝いを私たちに依頼されたご両親への感謝を表現しているように思え、とてもうれしかったです。女の子とご家族の命と絆が輝き続けた素晴らしい一日になりました」と話した。
きもの縁ブレイスは今後、6人の障害がある子の七五三を予定している。澤山さんは「現在の活動地はまだ関東が中心です。七五三を諦めている障害をお持ちのお子さんとご家族は全国にいて問い合わせをいただいています。さまざまな関係者の理解・協力を得て、私たちの取り組みを少しずつ全国に広げていければ」と語った。
同じく助成金10万円を贈呈された、不登校・ひきこもりの子どもらの学習支援を続けるNPO法人バンブーまなび塾(横浜市)の竹内直美理事長は「学習支援のほか、子どもたちがいろいろな体験をする機会を積極的につくっています。まなび塾にくる子どもの多くは、キャンプや海に行くなど、机の学習では学べないことを学べる体験が少ないからです。いろんな体験を重ねることで人生を諦めかけていた子どもが、なりたい自分を探す、自立的な子どもに変わります」と活動の成果を話した。
助成金額49万円が決定した、健康的な食生活の高齢者への普及を目指す研究に取り組む五味達之祐・東京都健康長寿医療センター研究員(管理栄養士)は「ソーシャルマーケティングと行動経済学の視点から、どうしたら高齢者に健康的な食生活を実践していただけるかなどを研究している。今回の研究助成金を最大限生かし、高齢者の健康づくりに貢献していきたい」と述べた。
助成金制度は大同生命厚生事業団発足の1974年度から毎年度実施。助成金額は1件原則10万~30万円(優秀な研究の場合は最大50万円)。24年度までの累計助成金額は17億6757万円、累計助成件数は4828件に上る。24年度に助成する155件は同事業団ホームページに掲載している。