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シリーズ「持続可能な食~食からエシカル消費を考えてみる」 CO2削減は「食品会社の責任」 フードロスにも取り組むニチレイフーズ

 気候変動、世界的な人口増加の影響など、私たちの根本である「食」は持続可能なのか——という問題意識は、確実に広がりつつある。こうした中で、企業は持続可能な食のためにどのような取り組みをし、課題解決に取り組んでいるのか。

 消費者がそれぞれに自ら良心的に社会的課題の解決を考える際に、消費活動の参考となる企業の取り組みを紹介する。

ニチレイフーズの佐藤友信サステナビリティ推進部長(東京都中央区築地の本社)

 

 わたしたちの日常生活に欠かせない存在となった「冷凍食品」。日本に冷凍食品が誕生してから2020年で100年を迎えたという。コロッケや唐揚げ、チャーハン、パスタから野菜、フルーツまで冷凍物が食卓に載らない日はない。

 一方、企業の生産活動において、気候変動対応や循環型社会などサステナビリティ経営が求められている。冷凍・冷蔵といった設備が必要な冷凍食品事業は、他の産業にも増してエネルギー対策が重要課題だ。

 日本のトップランナーの一員として冷凍食品を手がけてきたニチレイフーズ(東京)は、食品会社ならではの二酸化炭素(CO2)削減やフードロス対策などに取り組んでいる。2021年に新設されたサステナビリティ推進部の佐藤友信部長に同社の取り組みを聞いた。

▽グリーン電力証書

 「ニチレイフーズはニチレイグループのサステナビリティ基本方針にのっとって取り組んでいる。冷凍食品の会社なので電気をたくさん使う。そのため、エネルギー対応が重要になる。その一つが『グリーン電力証書』だ」

 太陽光や風力など再生可能エネルギーで発電した電力はCO2削減に寄与する。その価値を「証書化」し、取引されている「グリーン電力証書」。ニチレイフーズは2020年3月から年間約1400万キロワット時のグリーン電力証書を購入し、「本格炒め炒飯®」の製造ラインで使う電力として活用している。このため、同商品のパッケージに再生可能エネルギーで製造したことを示す「Green Power」マークが付いている。

炊きあがった白飯が流れる「本格炒め炒飯®」製造ライン

 

Green Power」マーク(パッケージ右下)が付いた「本格炒め炒飯®」

 

▽水力発電

 佐藤部長は、山形工場(山形県天童市)の自然エネルギー活用事例も強調した。

 「常温のレトルトカレーなどを製造していた山形工場で、2022年から冷やし中華や、つけ麺といった冷凍食品の製造を始めた。その際に山形県内の水力発電所でつくった電気(東北電力の「よりそう、再エネ電気」)を使用し、工場全体で電力由来のCO2排出量をゼロにした」

 工場内の冷凍冷蔵倉庫に太陽光パネルも設置。「地産地消」でエネルギーを創出している。

ニチレイフーズ山形工場。電子レンジで作る「冷やし中華」「香ばし麺の五目あんかけ焼そば」などを製造している(山形県天童市)

 

▽自然冷媒

 地球温暖化の要因となる温室効果ガスで大きな問題となっているのが「フロン」だ。エアコンや冷蔵庫の冷却に欠かせない冷媒で、冷凍食品会社にとっても重要な対策案件になっている。

 「冷凍食品は作るだけでなく、凍らせることが必要。二酸化炭素やアンモニアといった『自然冷媒』を使う機器があり、食品工場や冷蔵倉庫で順次、フロンから自然冷媒冷凍設備に切り替えている。山形工場では製造開始当初から採用し、グループ工場を含め国内15工場の約6割で切り替えが完了した」

山形工場の自然冷媒冷凍設備。全国の工場で順次切り替えを進めている

 

 このほか、揚げる・焼くといった食品製造の際に使うボイラーの燃料を灯油・重油から都市ガスやプロパンガスに転換を進めている。こうした取り組みを経て、ニチレイフーズ船橋工場があるグループの国内最大拠点(千葉県船橋市日の出エリア)では、CO2排出ゼロ達成が可能になったという。

▽プラスチック削減

 エネルギー対策だけでなく、冷凍食品に欠かせないのは包装やトレーなど商品に使うプラスチック削減対策だ。

「プラスチックはどうしても必要で、できることは『使用量を少なくすること』。包装パッケージを薄くしたり、トレーに乗せなくてもいいような商品は、トレーをなくしたりしている」

 ニチレイフーズでは、「今川焼」「焼おにぎり」のトレー廃止や「本格炒め炒飯®」「えびピラフ」「チキンライス」のパッケージを薄くするなどを実施。これまで200トン以上のプラスチック削減を実現したという。

「プラスチック削減は必要だが、パッケージをあまり薄くすると破けることもあるので難しい」と話す佐藤部長

 

 「そのほか、商品が入った複数の段ボール箱をまとめる『プラスチックバンド』がある。搬送するには便利だが、外す手間に加え、段ボール箱にダメージを与えることもある。商品の規格を見直しするなど、このプラスチックバンドの削減にも取り組んでいる」

▽アップサイクル

 リサイクルは重要な環境対策だが、他の製品に転換する「アップサイクル」も取り組む企業が増えている。

 「食品製造の過程で、どうしても『食品残渣(ざんさ)』が出てしまう。これまでは肥料や飼料にしていたが、『焼おにぎり』『今川焼』の食品残渣を発酵させ、除菌ウエットティッシュを開発した」

アップサイクルで生まれたウエットティッシュ。商品と同じデザインを採用したユニークさが注目された

 

▽「ハミダス」

 アップサイクルしたウエットティッシュ開発のきっかけとなったのが、ニチレイフーズの社員が自分の担当領域を超えて取り組む「ハミダス活動」だ。

 「持ち株会社化に伴い、ニチレイから2005年にニチレイフーズになったが、業績も悪く、社内の風通しも良くなかった。当時の社長(池田泰弘氏)が風土改革として経営者と社員の対話を重ねることを始めた。その結果、自分の担当領域を超えた “程度のいいおせっかい”をする風土に変わってきた」

 その中で環境活動の意識が高まり、社員のアイデア(はみ出す気持ち)から食品残渣のアップサイクルが生まれたという。

全国のメンバー「ハミダスフレンズ」が一堂に会し、“はみ出す気持ち”を高めるワークショップを開催。活動用にTシャツも作った

 

▽フードロス

 冷凍食品は、長期保存ができるメリットがあり、フードロス対策に適している食品といえる。

 「工場で製造した製品が1ケースあたりの規定数に満たず、出荷できないものがでてくる。こうした食品を全国のフードバンクなどに寄付してフードロスを減らす取り組みをしている。作ったものをフードロスなく食べてもらうという責任がある。環境に配慮したエシカルフードにも取り組み、CO2削減などの対策も含め、食品会社としての責任ある活動を続けていきたい」

 


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