ビールがおいしい季節になった。最近はビール離れが進み「とりあえずビール」ではなく、最初からハイボールを飲む人も多いようだ。ただ、仕事終わりなど疲れた体に、最初の一口として飲むビールに魅力を感じている人はまだまだ多いに違いない。
ビール各社が戦略を強化する中、サントリー(東京)は「これからの時代のビール」と銘打って缶ビール新商品を発表した。3月28日に東京都内で開いた発表会には、新テレビCMに出演した俳優の山﨑賢人さん、上白石萌音さん、お笑いコンビのオズワルドも登壇した。
名称も“ど真ん中”
4月4日に発売する新商品は、その名も「サントリー生ビール」。企業名と「生ビール」を前面に押し出したのが特徴だ。サントリーには「プレミアムモルツ」「同マスターズドリーム」といったプレミアムビールのほか、「パーフェクトサントリービール」のような糖質ゼロの機能性ビールがあるが、新商品は「毎日の晩酌で飲む『定番』」を目指したという。
発表会でサントリー取締役常務執行役員の西田英一郎ビールカンパニー社長は「スタンダードの“ど真ん中”だ」と強調した。サントリーには「定番」として「ザ・モルツ」があるが、3月で缶ビールの製造は終了し、今後は「サントリー生ビール」を缶ビールの定番にする考えだ。
イノベーション部が開発
新商品は2021年4月に創設した「イノベーション部」が開発した。同部は第1弾として炭酸水で割って飲む新しいビール「ビアボール」を発売。今回の新商品が第2弾になる。ビールカンパニー商品開発研究部の水口伊玖磨さんは、最も重視したことは、「『一口目のおいしさ』に加え『そのおいしさがずっと続く』ことだ」と説明した。
その背景には、ビールの飲み方が変化したことがあるという。サントリーによると、2018年の調査では、帰宅直後にとりあえず冷蔵庫を開けて1本飲むことが多く、350ミリリットル缶を飲む時間は約12分だったというが、コロナ禍など社会環境の変化に伴い、2022年には食事を楽しみながら約18分かけて飲むようになったことがわかったとしている。「飲み始めから飲み終わりまで、ずっとおいしい」を実現するため、仕込み時に麦汁の一部を煮出すという製法を3回実施。缶のデザインに「トリプル生」と記載した。
1日の終わりにビール
新テレビCMは「ビールを飲む時間は、いいことも悪いことも今日が無事終わることを確認する時間」というコンセプトで制作。「ビールが好きでいつかCMに出たかった」という山﨑賢人さんは「毎日仕事終わりに飲んでリラックスしている」と話し、上白石さんは「ビール初心者でも飲みやすい」とアピールした。オズワルドも「(お笑いで)スベったときでもおいしい」と笑わせた。
定番で正面勝負
西田社長は「ビール離れに歯止めがかかっていない」としながら、2023年10月の酒税法改正でビールの税率が引き下げられることに期待する。「定番ビール」はアサヒの「スーパードライ」やキリンの「一番搾り」といった人気ブランドがある。西田氏は「各社の強い定番があり、これまで正面から攻め込めなかった」とした上で、「その時が来た」と決意を語った。
「サントリー生ビール」の店頭想定価格は、350ミリリットル缶が218円程度、500ミリリットル缶が286円程度。