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進次郎氏の政治感覚と野党の責任 小視曽四郎 農政ジャーナリスト 連載「グリーン&ブルー」

 世の中、常に誰かが人気者として出てくる。今なら小泉進次郎農水相に石破茂首相、国民民主党玉木雄一郎代表といったところか。しかし、参院選後はダントツで参政党の神谷宗幣代表。人気と言っても批判、反発も背中合わせだから要注意だ。周知の通り、先の参院選は国民民主、参政両党が大躍進、思わず選挙公約を確かめた。

 国民民主党「農家の手取りを増やす」、稲作10アール1・5万円、畑作・果樹同1万円の「食料安全保障基礎支払」の創設、食料自給率目標50%など。

 参政党「間違った農政を考え直す」、農林水産業従事者の公務員化で担い手を確保し、食料自給率は100%。

 実家が農業やJA(農業協同組合)と関係が深い玉木代表だけに具体性があるのが国民民主で、一方、具体性はないが公務員化という意外性があるのが参政だ。

 対する自民党。「農業は国の基(もとい)」、基本計画に基づいた生産基盤の強化と農家所得の向上、規模の大小や個人、法人にかかわらず担い手の育成・確保など。政権党だけに現実性に重きを置いたのだろうが、「農業は国の云々(うんぬん)」は聞き飽きたフレーズ。農家所得は低迷し、農家数は激減。生産基盤弱体化が米不足の原因ではアピール力低し。特に米担当大臣を自認の小泉農相が生産者や関係団体に宣戦布告するがごとくの就任早々の「消費者重視」表明、「米価抑制に聖域なし」と場合によっては備蓄米どころか外国米輸入への腹づもりを明らかにした。これには「多くの農家は、はらわたが煮えくりかえるような思いだ」(関東のJA組合長)、「小泉農相のスタンスが農家の自民党離れを加速させたのは間違いない」(島根県の農業インフルエンサー、草野拓志さん)など、農家を大いに怒らせていた。結果、農業関係者の投票行動は自民党は選挙区、比例区とも43%台の得票率となったが、前回参院選に比して選挙区では14・3ポイント、比例区で10・4ポイントもそれぞれ減少。10年以降6回の参院選では最も低かった(農業専門紙調査)。これが農村県32の1人区を直撃した。前回28勝4敗の自民党は1418敗と敗北、比例区でも6減の過去最低12議席に。消費者重視は必ずしも生産者軽視や敵視とは言えないが、進次郎氏は就任1月もたたないうちに財界首脳らと相次いで会談。企業の農業参入を促す発言を繰り返し、農業関係者を刺激した。この政治感覚をどう理解したらよいのか。

 国会は衆参両院で与党が少数派に転落、かつてない景色となった。早速、国民民主の玉木代表は「与党が過半数を割り込むと野党も大きな責任を負う」と野党の役割に言及した。農家への直接払いも食料自給率向上もこれまでは与党のお手並み拝見の気楽な立場だった。しかし今後は少数与党に対し、責任ある野党がどんな建設的な行動を見せるのか、新たな歴史の幕が上がる。

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.31からの転載】


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