とろけるような繊細な舌触りと突き抜ける風味の鳥取和牛、ジューシーで和牛肉本来の強いうまみが特徴のしまね和牛──。鳥取、島根両県などの主催で山陰の和牛が味わえるフェアが1月23~31日、東京都内の二つのフランス料理店で行われる。フェアを前に試食会が都内で開かれ、参加者は一流シェフによる和牛料理を堪能した。
■和牛五輪で「肉質日本一」
鳥取県は江戸時代から日本有数の和牛生産地。血統登録と品種改良に取り組み、種雄牛「気高(けたか)」は全国に9000頭以上の子孫を残し「和牛の祖」と呼ばれた。近年はオリーブオイルの主成分で口溶けや風味が良くなるオレイン酸を55%以上含有する「鳥取和牛オレイン55」が人気を集めている。
島根県東部の出雲地方は古くから「たたら製鉄」が盛んで、和牛は鉄や木炭の輸送を担うため改良が進められてきた。時代が変わり役用(仕事用)から肉用へと需要が変化、子牛を全国の和牛産地に供給したが、近年では県内での肥育、出荷も盛んになり、雄大な自然と愛情が育む牛肉の産地として注目されている。
5年に一度開かれ「和牛のオリンピック」と呼ばれる全国和牛能力共進会で、鳥取和牛は2017年、しまね和牛は22年に肉質部門で日本一を獲得。両県が協力して山陰和牛のブランド化を推進している。
■生産者の気持ちが伝わる料理
試食会は東京・代官山のフランス料理店「メゾン ポール・ボキューズ」で開かれ、同店の入砂俊重料理長と、「ブラッスリー ポール・ボキューズ銀座」の星野晃彦料理長が担当した。星野料理長はサーロインを2ミリの厚さにスライスし、身が縮まないよう65~70度に温めた牛のだしの中を、しゃぶしゃぶのようにさっとくぐらせて「和牛サーロインのポッシェ」などを実演した。
入砂料理長は「生産者は『和牛をストレスなく穏やかに育てることがとても大事』と口をそろえる。生産者の気持ちが伝わる料理になればと一生懸命考えた」とあいさつ。星野料理長は「鳥取和牛は赤身と霜降りがピカピカ光っているようで、おいしそうだなと感じた。しまね和牛は霜がしっかり降り、うまみ、歯ごたえ、甘みも強い」といずれの肉質も絶賛した。
フェアは1月23~31日。メゾン ポール・ボキューズでは鳥取和牛フィレ肉のローストがコース料理で、銀座のブラッスリー ポール・ボキューズ銀座ではしまね和牛サーロインのポッシュが前菜の差し替えとして味わえる。