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脱炭素化〝A評価〟は長野など8自治体 WWFジャパンが自治体の取り組みを採点

 脱炭素化や省エネ、再生可能エネルギーなどに対する各都道府県の取り組みを比較したところ、東京、長野、京都など8自治体が総合評価で最上位だったとする調査結果を、世界自然保護基金(WWF)ジャパンが11月22日、発表した。また、温室効果ガスの排出削減目標について、国より高い目標を設定しているのは7自治体どまりで、27自治体は国と同じ、13自治体は国を下回っていたと指摘。WWFジャパンは「国は自治体の脱炭素化の支援策を一層充実させ、自治体は可能な限り意欲的な削減目標案と省エネ、再エネに関する施策案を検討すべきだ」と提言している。

■大都市圏、独自取り組みは高評価

 WWFジャパンは6~7月、脱炭素化について47都道府県にアンケートし、全自治体から回答があった。削減目標の内容や再エネ、省エネへの取り組みなどを基に点数化し、自治体を5グループに分けた。

 「最上位」は岩手、東京、神奈川、長野、滋賀、京都、大阪、徳島の8自治体。「上位」は北海道、福島、栃木、群馬、埼玉、富山、静岡、長崎、熊本の9自治体。「中間」は宮城、山形、千葉、新潟、山梨、岐阜、愛知、兵庫、鳥取、広島、香川、福岡の12自治体。「下位」は青森、秋田、三重、奈良、島根、岡山、山口、高知、佐賀の9自治体。「最下位」は茨城、石川、福井、和歌山、愛媛、大分、宮崎、鹿児島、沖縄の9自治体だった。

 最上位グループには大都市圏や独自の取り組みを進めている長野県などが入り、下位、最下位グループは西日本の自治体が多い傾向が見られた。

■削減目標「国未満」が3割

 アンケートでは、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの削減目標についても聞いた。日本政府は「2030年46%削減、さらに50%の高みを目指す」「2050年実質ゼロ」と宣言している。

 30年の中期目標で、目標値が国を上回っているのは7自治体(青森、岩手、秋田、東京、長野、富山、鳥取)で、半数近い27自治体は国と同様、約3割に当たる13自治体は国を下回っていた。50年の長期目標は、目標を掲げていない茨城県を除く46自治体が、国と同じ「2050年ゼロ」としている。WWFジャパンは「中期、長期ともに国の目標が事実上の上限になっている」と指摘している。

 再エネでは、43自治体が調達の目標数値を持っていると回答。青森県を除く46自治体は独自に再エネ設備を導入するなど、再エネ利用に前向きだった。一方、省エネで具体的なエネルギー消費量の数値を目標としているのは20自治体と半数以下で、WWFジャパンは「再エネより対策が比較的容易なはずの省エネの取り組みが遅れている可能性が高い」とする。気候変動イニシアチブなど脱炭素に関する国内外の連盟やキャンペーンには、25自治体が加入していた。

■課題は財源確保、人材不足

排出削減を推進する上での課題(複数回答)

 

 排出削減を推進する上での課題を尋ねた質問では「自治体独自の財源確保が難しい」との回答が36自治体(76.6%)で最も多く、「人的リソースが不足」(30自治体、63.8%)、「地方交付税が不十分」(22自治体、46.8%)、「地元企業の協力が得られない」(9自治体、19.1%)などが挙げられた。

 第28回気候変動枠組条約締約国会議(COP28)が11月30日からドバイで開かれる。WWFジャパンは調査結果を基に「日本は2030年削減目標の引き上げと2035年目標の新設に向け、早急に議論を開始すべきだ。削減の現場として重要な自治体が抱える課題や事情も、オープンな形で俎上(そじょう)に載せることが重要になる」と対策強化を求めている。

 WWFジャパンは、自治体の取り組みを自治体向けプラットフォーム 「脱炭素列島」 や、自治体の「脱炭素施策事例集」でも紹介している。

 ※WWFジャパンによる12月20日の訂正発表を受け、都道府県のグループ分けなどを修正しました。


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