人々のつながりの希薄化を背景に、社会において、家庭でも職場・学校でもない第3の居場所(=サードプレイス)の存在が注目される。
サードプレイスという概念は米国の社会学者レイ・オルデンバーグの著書「The Great Good Place」(忠平美幸訳「サードプレイスーコミュニティの核になる『とびきり居心地よい場所』」みすず書房)で提唱された。身近なカフェやコワーキングスペース、コミュニティースペースなどさまざまな場所が注目されている。
サードプレイスの特徴として、①誰もが自由に出入りできる ②誰もが対等にコミュニケーションできる ③その場にいる人同士で会話が楽しめる ④足を運びやすく親しみがある ⑤規則的に通うことができる ⑥地味で目立たない ⑦ポジティブでリラックスできる雰囲気 ⑧家から通いやすい、と説明される。
だが、しがらみの多い地域コミュニティーの中に、柔軟で明るく居心地のよい場所をつくれるものだろうか。そんなことを考えていた時、福井県坂井市で「大関コミュニティセンター」に出合った。
驚いたのは、来訪者の心地よさを意識した数々の工夫である。地域のコミュニティーセンターというと、部外者には敷居が高く、入りづらいことがしばしばだ。だが、うつむき加減で玄関を入ると「笑顔パネル」「上に展示してあります」と足元に記載されている。思わず上を見上げると、巨大なハートマークのなかに、数百人の住民の笑顔の写真が詰まった大きなパネルがあった。迎えてくれた職員の方々もおおらかで温かい。
中に入ると、住民の手作りによるカフェコーナーが設けられていた。建築士や大工、電気工事など地元の専門家の指導を受けて作り上げたスペースだ。これが何だか居心地がよい。
カフェは無料。雑誌コーナーも設置され、子どもから高齢者までさまざまなスタイルで楽しめる。
落書きをしたり、運動するスペースもあり、夏休みには地元小学校に通う児童の半数以上が立ち寄ることもある。トイレには無料の生理用品が置かれ、「困ったら相談してね」という子どもたちへのメッセージも貼られていた。
福祉や健康づくり、防災・防犯、環境保全など数多くの地域イベントも行われている。地元農家と子どもたちの農園づくりや、DXごみ拾いなど、楽しみながら参加できる工夫満載の企画が面白い。廊下には「わくわくボード」が設置され、楽しい感想や明るい未来につながる要望など、次の企画につながるコメントが多数貼られていた。
何だか楽しい。また来たい。そんなふうに感じて、老若男女が集う。そんな居心地のよい場所は、コミュニティーのつながりをポジティブで豊かなものにすると感じた。
【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.36からの転載】