「10月8日は何の日か」。これに答えられる人はかなりのウイスキー通だろう。正解は「角ハイボールの日」で、1937年10月8日にサントリーが「ウイスキーの原点」としている「角瓶」が発売された日だ。サントリーはこの日にちなみ、10月8日に東京都内で「サントリーウイスキー『美味品質』の取り組み」と題した説明会を開催した。
ハイボールはすっかり消費者のアルコール嗜好(しこう)に定着した。サントリーによると、2024年1~9月実績で同社のウイスキー類出荷(金額)は、前年同期比111%。ハイボール缶も104%と好調だといい、登壇した森本昌紀・常務執行役員スピリッツ本部長は「市場をけん引することができた」と話した。
▽「変えたこと」も
近年、ジャパニーズウイスキーが海外で評価されるようになり、全世界におけるジャパニーズウイスキー内のシェアは、サントリーが90%以上を占め、中でも約65%が「角瓶」だという。サントリーは87年の角瓶の歴史の中で、瓶のデザインなど「変わらないこと」と消費者の飲用スタイルに合わせ「変えたこと」があると説明。森本本部長は「角瓶はハイボールで飲む人が多いので、骨格は守りながら時代時代の嗜好に合わせ少しずつ変化している」と話した。
▽「つくり込み」と「つくり分け」
日本洋酒酒造組合は24年4月、「ジャパニーズウイスキーの表示に関する基準」を定め、本格施行した。定義は「日本国内で製造し、3年以上熟成させたモルト・グレーンウイスキーのみ使用した商品」で、サントリーはこれをもとにウイスキーづくりを進めている。
サントリーウイスキーが目指す「美味品質」について、明星(みょうじょう)嘉夫ブレンダー室長は、原酒の「つくり込み」と「つく
り分け」が重要だと説明した。「つくり込み」とは、原料、醸造、蒸留、貯蔵、ブレンドといったウイスキー製造工程のそれぞれのプロセスにこだわり、質の高い原酒を造る。その上で、さまざまな特徴を持つ原酒を組み合わせ「つくり分け」をすることで「美味品質」のウイスキーになるという考え方だ。明星室長は「個々の原酒の品質が高いことが最も大事だ」と強調した。
▽角瓶を中心に
こうしたウイスキー造りの結果、代表的なウイスキー「山崎12年」が世界的な酒類コンペティション「インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ2024」でウイスキー以外の酒類も含めた全部門での最高賞を受賞した。角瓶も同コンペに出品し、ジャパニーズウイスキー部門のゴールドを受賞。「ほとんどが価格は1万円以上か1万円までという高級ウイスキーの中、2000円以下で買えるウイスキーは角瓶だけだった」(森本本部長)という。
サントリーは「角瓶」を、創業者の鳥井信治郎氏が「信念と執念から生まれた日本のウイスキーの原点」だとする。森本本部長は今後の「美味品質」について「日本のウイスキーの幕を開けた角瓶を中心としたウイスキーの価値を追求していく」と決意を語った。