2023年2月26日=1,421
*がんの転移を知った2019年4月8日から起算
▽貴重な機会
2021年12月、浄土真宗東京ビハーラが主催するオンライン「がん患者・家族語らいの会」で1時間しゃべらせてもらった。月に1回開かれており、コロナ禍以前は対面だったが現在はオンラインがほとんど。当時わたくしは58歳。そしてこのたび2023年2月、なんと再びその機会をちょうだいできた。1度の依頼だって数少ない中で、2度目となると極めて希少だ。関わってくださった方々のご尽力です。心より感謝申し上げます。
ビハーラとは「安らかな」「くつろぎ」「安住」「お寺」などの意味を持つサンスクリットで、「ホスピス」に代わる仏教語(同会通信より引用)。ちなみに浄土真宗東京ビハーラは活動の拠点を、築地本願寺(東京都中央区築地)に置く。現地を訪ねたこと、わたくしはいまだない。
▽お題は足し算命
今回のお題は、「足し算命がくれた2023」とした。「足し算命」とは、肝臓転移を知らされメチャクチャへこんだ2019年4月8日を第1日として生きた日を数えるもの。カウントダウン式の「余命」ではなく、足し算なのでだんだん増えていくのがポイントだ。かような話をすると、「大橋さんは明るく元気で前向きですね~」などと言われることがある。こう言われることは嫌やないけれど、決してそんなんやない。だってがん治療中の身であるから。
がんと共存する・がんを生きるなどと、社会は声高に言うけど、本音を言えば、がんなしで生きたい。胃がなくなった後遺症はもちろん、抗がん剤副作用と日々バトル中だ。3年半以上も続けてきた薬だ。心臓の機能も下がってきた。もうやってられへん。心中穏やかとは言えへんのです。
でもやってられへんけど、決して死にたいわけやない。生きたい、生きていきたい、どんな形でもしぶとく。過去に出来たことが奪われても、ヨロヨロよろけても、地べたはってでも。
▽一期二会
そんな中で、己が気ぃ楽にできることはやりたい。だから、「一期二会(ふたえ)」。一期一会では寂しい。なので再び出会いたい、再会を期する出会いにしたい。
この「一期二会」が浄土真宗東京ビハーラで実現した。大いにうれしい。前回も今回もどちらもオンラインであり、会場や参加者の空気に触れられる対面にはかなわないかもしれない。しかしながら仲間であるがん患者・家族に出会えた。さらに患者・家族ではない医療および仏教関係者も参加したと聞く。わたくしから言わせてもらえば恐れながら、みんな同士である。人間同士。そのうちぜひ実際に会いたい。
ところでユーチューブライブ配信、相変わらず続けてます。登録名「足し算命・大橋洋平の間」。配信日時は不定期なためご視聴しづらいとは察しますが、どこかでお気づきになりましたならばお付き合いくださいな。こちらも何とぞ応援の程よろしくお願い申し上げまぁす。
(発信中、フェイスブックおよびYouTubeチャンネル「足し算命・大橋洋平の間」)
おおはし・ようへい 1963年、三重県生まれ。三重大学医学部卒。JA愛知厚生連 海南病院(愛知県弥富市)緩和ケア病棟の非常勤医師。稀少がん・ジストとの闘病を語る投稿が、2018年12月に朝日新聞の読者「声」欄に掲載され、全てのがん患者に「しぶとく生きて!」とエールを送った。これをきっかけに2019年8月『緩和ケア医が、がんになって』(双葉社)、2020年9月「がんを生きる緩和ケア医が答える 命の質問58」(双葉社)、2021年10月「緩和ケア医 がんと生きる40の言葉」(双葉社)、2022年11月「緩和ケア医 がんを生きる31の奇跡」(双葉社)を出版。その率直な語り口が共感を呼んでいる。
このコーナーではがん闘病中の大橋先生が、日々の生活の中で思ったことを、気ままにつづっていきます。随時更新。