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天王山の麓に建つサントリー山崎蒸溜所

「名水の里」で生まれるウイスキー サントリー山崎蒸溜所100周年

“天下分け目”の戦いで知られる「天王山」。大阪と京都の境にあるこの地にサントリー創業者・鳥井信治郎氏は「日本人の味覚に合った日本のウイスキーをつくりたい」と1923(大正12)年、「山崎蒸溜所」の建設に着手する。

創業当時の山崎蒸溜所

それから100年。スコッチ、アイリッシュ、アメリカン、カナディアンの4大ウイスキーに「ジャパニーズウイスキー」が加わり「世界5大ウイスキー」といわれるようになった。

(左から)桂川、宇治川、木津川が合流。手前に山崎蒸溜所がある

 熟成に適した環境

鳥井氏が国産ウイスキーづくりに、この土地を選んだ理由は「水」だ。天王山の麓は桂川、宇治川、木津川が合流し“名水の里”として知られる。湿度が高いこともウイスキーの熟成に適していた。

2023年は「ウイスキー100周年」の節目の年に当たり、サントリー(東京)は3月15日、山崎蒸溜所(大阪府島本町)でウイスキーづくりについての説明会を開催した。第20代工場長の藤井敬久氏は「サントリーウイスキーの特徴は、バランスの取れた重奏感があることだ」と説明。このためバラエティーに富んだ味を生み出し、角瓶やオールド、ローヤルなど各種ウイスキーの原酒を生産している。

複雑な香味を生み出すという木桶

 木桶で発酵し多彩な香味

  ウイスキーの原料は水と大麦。二条大麦を発芽・乾燥させ麦芽にして、山崎の名水で仕込む。発酵にはさまざまなタイプの原酒をつくるために木桶(おけ)発酵槽とステンレス発酵槽を使い分けているという。ブレンダー室の野口雄志部長は「ステンレスは管理がしやすいが、放熱が大きい。木桶は保温効果が高く、香味に複雑さが増す」と説明する。 

さまざまな形をした蒸留釜で多彩な味に
貯蔵樽の材質によっても味わいが異なる

「世界でも稀(まれ)」だという大きさや形状の異なる蒸留釜(16台)を使うことで、多彩な原酒「ニューポット」(蒸留されたばかりの無色透明なモルトウイスキー)が生み出される。さらにホワイトオーク、スパニッシュオーク、ミズナラなど材質・大きさが異なる樽(たる)を使用して熟成し、香味も複雑に変化するという。

 シングルモルト「山崎」誕生

山崎蒸溜所の代表的ウイスキー「山崎」

こうしてつくり出されるサントリーウイスキーが世界的に認められることになったのはシングルモルトウイスキー「山崎」だ。「この国を代表するシングルモルトを」との2代目社長・佐治敬三氏の思いからスタートし、1984年に「華(はな)のある香り」が特徴の「山崎」が誕生。「山崎12年」が2003年、世界的な酒類コンペティションで日本初の金賞を受賞する。その後「白州」「響」といったプレミアムウイスキーが次々とコンペで賞を受賞し、ジャパニーズウイスキーを世界に広めることになった。

 原酒不足の課題も

テイスティングをする佐治敬三氏(左)と鳥井信治郎氏

ところが日本のウイスキー市場は「山崎」誕生の前年1983年をピークに長いダウントレンドに入り、原酒生産も抑えるようになる。近年はハイボールブームに支えられ、復調の兆しが見えるが、熟成に時間がかかるウイスキーは需要が回復しても簡単に市場投入できないという悩みを抱える。

「創業精神を大事にしながら新たな挑戦を」と話す藤井敬久・現工場長

ウイスキーブームが過ぎ、低迷期に入ってからサントリーに入社したという現工場長の藤井氏は、100周年を節目に次の100年について「守るべきは守る。変えるべきは変える」と強調する。「創業者精神や品質重視は変えないが、昔のつくりかたは作業の負荷もある」として機械化も取り入れる考えで「ITなど最新技術を入れることも検討したい」と意欲的だ。

 新たなウイスキーの可能性

山崎蒸溜所の初代工場長は、後にニッカウヰスキーを創業する竹鶴政孝氏だという。ジャパニーズウイスキーの礎を築いた山崎蒸溜所から、次の100年にかけて新たな味わいのウイスキーが誕生する可能性がありそうだ。

「水と生きる」がサントリーの企業コンセプト

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