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生成AI時代の「共創」 よんななエコノミー 吉無田修

 東京スカイツリーなど著名建築物の設計で知られる、国内有数の組織設計事務所、日建設計。東京・飯田橋の本店ビル内に2023年4月に開設された共創プラットフォーム「PYNT(ピント)」を、社会人大学院で共に学んだ友人の紹介で訪れた。

 スタイリッシュな空間に入って、まず私の五感を捉えたのは1杯のグアバジュース。南国の濃厚な甘みと爽やかさに、思わず笑顔になった。飲み物の無料提供数は、1日平均で約600杯に上るといい、この数は施設がどれだけ活発に機能しているかを測る指標の一つになっているという。

 案内役を務めた同社イノベーションデザインセンターの冨木昌史さんは、設計事務所の役割の変化を、自身の歩みとともにこう振り返った。

 「1990年代、私が入社した頃の社会は今よりもシンプルで、顧客自身が事業計画を立てることも比較的容易だった。仕事の開始時には事業計画がすでに定まっていることが多く、それを美しく、使いやすく、長く使える形に設計するのが主な役割だった」

 2000年代に入り、「もっと気持ちよく働くためにはどうしたらよいか」といった相談が寄せられるようになった。建物の設計前に「そこで何を実現したいのか」という目的を一緒に考えるパートナーシップへの変化だ。

 不確実性が高まる近年、「そもそも何をしたらよいか分からない」という本質的な課題に直面する組織が増えている。こうした状況を受けて、日建設計は受託業務にとどまらず、従来のやり方では解決できない課題に対し、自ら提案や事業化を行い、新たなマーケットの創出に向けた活動を始めた。原動力は、社員一人一人のやりたい気持ちだ。

 変革を加速させる仕掛けが、社外との協業を誘発するPYNTだ。ここでは日建設計の社員だけでなく、多様な外部プレーヤーが交差している。自社単独では解決できない社会課題に対して、組織の壁を越えて知恵を出し合い、「まちの未来の選択肢」を試作する。例えば、人口減が進む鹿児島県の温泉街では地元企業の活動に、日建設計の社員が参画、その土地ならではの経営モデルの創出に向けて共同研究を行っている。

 テクノロジー分野を取材する中で、生成AIの急速な進化により、知的作業の一部をAIが担い始める時代が来たことを実感する。プロンプトを入力すれば、空間レイアウト案が瞬時に生成されてしまうように、これまで専門職のスキルとされてきた作業の多くは、AIによって自動化、効率化され、コモディティ化していくだろう。

 しかし、プロジェクトの最初の一歩は「こんなことをやりたい」という人間の想いから生まれるのではないか。PYNTでは、日建設計の社員と、社外の異なるバックグラウンドを持つ人々の想いや知見が掛け合わさり、化学反応が起きていく。AIで作業の多くが効率化される時代だからこそ、こうした社内外のオープンな掛け算の価値は高まっていくはずだ。

(共同通信デジタル事業部 吉無田修)

【KyodoWeekly(株式会社共同通信社発行)No.22からの転載】


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