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米新政権、疲弊する農村対策が重要課題 薄井寛元JA全中ワシントン連絡事務所長が講演

 一般社団法人共同通信社の加盟新聞社の記者らが参加する「めぐみフォーラム」は、12月15日に薄井寛・元全国農業協同組合中央会(JA全中)ワシントン連絡事務所長を講師に招き「米新政権の農業政策と日本への影響」をテーマにオンライン講演会を開いた。

共同通信アグリラボの石井勇人所長から取材を受ける薄井氏(右)=2020年12月、東京都港区

 ▽中間選挙対策が最優先

 薄井氏は著書「アメリカ農業と農村の苦悩」(農文協)で、2020年の米国大統領選挙の大接戦を正確に予測するなど、米国ルーラル(農村)のウオッチャーとして第一人者。講演では「バイデン次期政権の基盤は弱く、2年後の中間選挙の対策が最優先になる」と見通した。

 薄井氏は、民主党のバイデン候補が勝利したものの、ルーラルの有権者の間ではトランプ氏に対する強い支持が継続していると分析。背景には「首都ワシントンのエリートから忘れられた」という苦悩と閉塞感があり、地方では、都市との格差拡大、若年層の流出、薬物依存などのモラルの低下、農家の自殺増などに対する不安感が強いという事情を紹介した。

 バイデン次期政権の最優先課題として、新型コロナ対策、経済政策、人種問題、気候変動対策の4分野を挙げ、「政権発足後の2年間は、中間選挙対策が最優先で、それまでは自由貿易を推進するのは難しく、環太平洋連携協定委(TPP)を含む新たな通商協定への加盟は当分の間はない」と予想した。

 ▽懸案は先送り

 農業分野の重点施策としては、脱炭素農業の推進、持続的なバイオエネルギーの供給促進、家族経営農家重視の3点を挙げ、移民農業労働者の許可、農薬による水質汚染対策、食肉加工場の安全基準などに関する規制緩和や、アグリビジネスへの反トラスト法適用強化などの懸案については「取捨選択のうえ、多くは22年の中間選挙後へ先送りにする」と見通した。

 バイデン次期政権の通商政策の展開は「極めて不透明」とした上で、気候変動対策などの環境規制を通商政策と結びつける可能性があり、22年の中間選挙が近づけば、 チーズ、バター、脱脂粉乳などの酪農製品や、トウモロコシ、牛肉等の対日輸出増を求めてくる懸念はあるとした。

 ▽地方で病院、新聞が激減

 薄井氏によると、米国における農村総合病院の総数は1821カ所(18年)で、過去10年(11-20年)に131カ所が閉鎖されるなど、地方の病院の経営が著しく悪化しており、新型コロナ対策上も、農村総合病院救済法の制定が内政上重要になる。

 また、地方経済の疲弊に伴って、小売店や病院だけでなく地方紙の廃刊も続出しており、全米3143郡のうち、2000以上の郡で日刊新聞は一紙も存在しない「新聞砂漠」(News Deserts)という状況が拡大しているという。薄井氏は「メディア全般に対する信頼を高めていくための最善の策は、人びとが全国紙よりもより信頼する傾向の強い独立した地方紙を支持し、普及することだ」という、南カリフォルニア大学のマルク・アンバインダー上級研究員の発言を引用し、地方紙の重要性を訴えた。

 

(共同通信アグリラボまとめ)

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