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【コラム】見えない小泉進次郎氏の力量

 昔の永田町ならば、衆院当選わずか4回、38歳にすぎない青年代議士は、まだまだ「はな垂れ小僧」の扱いを受けただろう。だが、今年の大型連休中、小泉進次郎氏が米国ワシントンを訪れ、古巣のシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)で講演をしただけで、マスコミ各社は大きく報じた。

 2008年9月、小泉純一郎元首相が政界からの引退を表明し、後継に次男の進次郎氏を指名した。「親ばかと言われるだろうが、私が27歳のときよりも、しっかりしている」との純一郎氏の紹介に、多くの人は「変人などではなく、ただの親ではないか」と思った。そしてその日から、進次郎氏の一挙手一投足が注目されるようになった。

 小泉進次郎氏が議員バッジを付けて間もなく10年となる。甘いマスクと聴衆の心をわしづかみにする話術、そして歯切れのいい演説で、行く先々は黒山の人だかりとなる。「動員をかけなくても、瞬く間に数百人を集められるのは彼だけさ」(自民党中堅議員)と評価する声にはねたみがにじむ。

 のみならず、最近は「将来」ではなく、「次期総理」「ポスト安倍」の一人として目されつつある。本人は自民党総裁選への出馬を口にしたこともなければ、総理への意欲をにおわせたこともない。しかし、「次の総理」を尋ねる世論調査では、煩悩がむき出しの石破茂・元幹事長や、禅譲ばかりに期待を寄せる岸田文雄政調会長を抑え、必ずトップに来る。

 なぜ小泉氏はこれほど注目され、これほど人気があるのか。まだ誰も彼の政権構想を耳にしたことはないし、彼の政治理念や哲学を知る者も皆無に等しい。復興政務官や農林部会長、厚生労働部会長として一生懸命に仕事をしてきたが、総理総裁の器か否かを判断するには時期尚早である。

 むしろ小泉氏は、マスコミによって育てられているアイドルだと見た方がよい。マスコミは小泉氏を美化したり、虫眼鏡を当てたりして、実物以上の存在に仕立てている。タレント不在の永田町において、小泉氏はマスコミにとってうってつけの政治家なのである。「政治ニュースはなかなか数字(視聴率)が取れない。しかし、進次郎の絵(映像)を出せば必ず取れる」(キー局デスク)のである。

 当の小泉氏の側も、マスコミをうまく使いつつ、つぶされることを警戒している。「早く色気を見せたら瞬く間にバッシングに遭う」(小泉氏周辺)として慎重さを崩していない。だが、「マスコミ受けするコツは心得ているが、裏方や調整は苦手なようだ。まぁ、一言でいえば雑巾がけが足りない」(閣僚経験者)といった厳しい声も先輩議員から出始めている。

 のみならず、マスコミが小泉氏ばかりを追いかけるため、他の若手議員はまったく注目されていない。これではいずれ「小泉一強」になりかねないし、もしも小泉氏がつぶれれば、国民の政治への関心は急落する。与党にも野党にも有望な若手議員はいるのだから、マスコミはそちらにもペンとレンズを向けるべきではないか。

 確かに小泉氏は逸材かもしれない。だが、親の七光り、そしてマスコミのバイアス(偏り)もあって、国民は素の小泉氏、等身大の進次郎氏を知ることができない。熱しやすく冷めやすいのは日本人の国民性であるが、政治に関しては冷静かつ客観的に見ることが肝要である。しばらくカメラのズームを思い切り引いて、小泉氏を遠くから眺めてみてもいいのではなか。彼のためにも、またわれわれ国民のためにも。

(政治アナリスト 楠 拳太郎)

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