【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】唯一無二の命
【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】唯一無二の命

【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】唯一無二の命

2022年4月28日=1117
*がんの転移を知った2019年4月8日から起算


わが地元の田植えが済みました=4月22日、三重県木曽岬町
わが地元の田植えが済みました=4月22日、三重県木曽岬町

▽兵士だって生きたい

テレビや新聞では連日、ヨーロッパでの戦争に関する報道がなされている。

どんな理由にせよ、人を殺したり、人が殺されたりしていいはずがない。世界中すべての共通認識だと私は考える。なぜならばこの世に生を受けたヒトが持つ“唯一無二の命”だから。

ウクライナでは民間人にも多数の死傷者が出ている。抵抗できる武器も持たず、丸腰で逃げ惑う弱き人たちである。決して許してはいけない行為だ。

兵士だってそうだ。死にたいと思っている兵士がいるのだろうか。「命を懸けて、家族そして祖国を守る」画面の向こう側で、一人のウクライナ兵士は語った。無論そうなんだろうけれど、生きたい、生きて家族の元に、自らの居場所に帰りたいはずだ。

▽医療現場でも

昨年12月から今年1月にかけて医療現場で放火、猟銃による殺傷事件が相次いだ。

医療の道に身を置いて30年余り、これほど立て続けに事件が発生したことがあっただろうか。医療現場は、セキュリティーに非常におおらかである。誰でも出入り自由、誰かが凶器を所持しているとは、通常考えない。少なくとも私はそうだった。

在宅診療も同様で、依頼があれば見ず知らずのお宅へも訪問する。すべて苦しむ人を隔てることなく救済したい一心からだ。その現場で殺人事件だなんて、とても怖く、何よりやるせない。そして被害を受けた方々の心中をお察し申し上げるとともに、亡くなった方のご冥福をお祈りしたい。

近づくとこんな風に見えます=4月22日、三重県木曽岬町
近づくとこんな風に見えます=4月22日、三重県木曽岬町

▽No Murder

それにしても人間はどうして命をこれほど粗末に扱うのかな。たとえどんな訳があるにせよ、殺人はあかん。他人のモノを奪うことはできない、ましてや命を。

でも、どこかむなしい。なぜならば有史以来こんなことは語り尽くされてきたはずだから。それにもかかわらず2022年のいまも世界のどこかで殺人は起こり続けている。

だったら理由はさておき、ただただ「殺人はあかん」、“No Murder”でどぉかな。これだけで世の中もっと生きやすくなりそうな気がする。生きたくても思い通りには生きられない病を抱える私から言わせてもらえるならば。

(発信中、フェイスブックおよびYоuTube“足し算命520”


おおはし・ようへい 1963年、三重県生まれ。三重大学医学部卒。JA愛知厚生連 海南病院(愛知県弥富市)緩和ケア病棟の非常勤医師。稀少がん・ジストとの闘病を語る投稿が、2018年12月に朝日新聞の読者「声」欄に掲載され、全てのがん患者に「しぶとく生きて!」とエールを送った。これをきっかけに2019年8月『緩和ケア医が、がんになって』(双葉社)、2020年9月「がんを生きる緩和ケア医が答える 命の質問58」(双葉社)、2021年10月「緩和ケア医 がんと生きる40の言葉」(双葉社)を出版。その率直な語り口が共感を呼んでいる。


このコーナーではがんと闘病中の大橋先生が、日々の生活の中で思ったことを、気ままにつづっていきます。随時更新。

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