
愛知県大府市は、国産バイオリンを初めて製造した“バイオリン王”、鈴木政吉(1859-1944)にちなんだまちづくり「バイオリンの里」構想に取り組んでいる。2022年度から小学校の授業でバイオリンの演奏体験を盛り込むなど、バイオリン関連の各種事業を展開する。
鈴木政吉は1887年、鈴木バイオリン製造(愛知県大府市)を名古屋市で創業。大正時代に世界的楽器メーカーへ成長させた。政吉が製造したバイオリンは、国内外の博覧会で数々の賞を受賞するなど国際的評価が高かった。バイオリンを贈呈された物理学者アインシュタイからの政吉宛ての礼状もある。鈴木バイオリン製造は1935年に大府分工場を新設、分工場隣の済韻研究所で政吉は戦時下もバイオリンの音色の研究に没頭した。1944年に84歳で亡くなった。大府市内の愛三文化会館に政吉の胸像が設置されている。
鈴木バイオリン製造は2021年4月に名古屋市から大府市へ本社を移転。本社内にはバイオリンを学べる音楽教室「スズキ・メソード」を設けたほか、楽器職人の大府市内の学校への派遣や工房見学など、バイオリンの裾野を広げる活動に取り組んでいる。大府市出身の世界的バイオリニスト竹澤恭子さんや、「高嶋ちさ子12人のヴァイオリニスト」の元メンバー水野紗希さんは、幼少期に「スズキ・メソード」でバイオリンを学んだという。
大府市は「バイオリンの里」のまちづくりを掲げ、2022年度事業として、市内小学校での水野さんのバイオリンコンサートを開催するほか、大府市立北山小学校4年生を対象にしたバイオリンを使った音楽教育▽全ての市内公立保育園におけるバイオリンの紹介・ミニ演奏会▽大府みどり公園クラシックコンサート▽バイオリンなど弦楽器による野外音楽フェスティバル▽鈴木バイオリン製造本社工場見学会▽鈴木政吉宛てのアインシュタインからの手紙複製品作成、展示―など、実施予定だという。
大府市は「政吉が描いたバイオリンの里構想を実現するため、子どもから大人までがバイオリンを身近に感じられる事業に取り組む」としている。