「ジオン軍の失敗」「ジオン軍の遺産」の続編はあるか?

 ガンダム好きの中央大学国際情報学部の岡嶋裕史教授は、今年1月に角川書店からマニアックな著書「ジオン軍の失敗」と「ジオン軍の遺産」を出版した。編集を担当した角川出版の松坂豊明さんと制作秘話を語った。5回続きの3。

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対談(2):“異世界もの”コンテンツは日常系?

30年越しの夢 「閃光のハサウェイ」がついに映像化

 松坂 0079年を取り扱った「ジオン軍の失敗」に加えて、続編の形で0080年代を主とした「ジオン軍の遺産」を出されました。更なる続編も書けそうですか?

 岡嶋 書くぶんにはいかようにも書けると思うんです、こういうのって。ただ、読んだ方に面白いと感じていただけるかどうかは分かりません。「ジオン軍の失敗」も「ジオン軍の遺産」も、同人のノリで好き勝手に書いてると思われていますが、やはり当初から商業出版として立てた企画ですし、読者さんを楽しませるための仕掛けは各所にちりばめられています。

 「同人的な内容を、論文調でアホほど真面目に」が根っこのアイデアですから、読みにくい悪文に仕上げていますが、そこも最低限の希釈処理は施しています。「商品」になってるんですよね。

 でも、この調子で更に続編を作ると、楽しんでいただくポイントが少しずつ減っていくだろうと考えています。

 松坂 それは何か理由があるんですか?

 岡嶋 モビルスーツを取り上げて、「なんでこんな設計になったんだ」とか、「どうしてこういう使い方をしたんだ」とか、ああでもないこうでもないとこねくりまわすのが本書の中核です。それって、好きな人同士が集まって、仲間内で議論するのと本質的には変わりません。

 その種の議論は情報量が多ければ多いほど、そしてその情報をみんなが共有していればしているほど楽しいと思います。情報があれば、それが技術であれ政治であれ、切り口も増やすことができます。

 一年戦争はそれらが突出していますし、ラプラス戦役くらいまでは、好きな人であればなんとなく「基礎教養として」モビルスーツのスペックなどが頭に入っていると思います。ところが、その先の時代はまだ多くの人にリテラシーとして根付いてはいないと思うんですよね。時代を広げて0100年代の「ジオン軍の~」を書いたとして、「この機種はどこの陣営のだっけ?」とウィキペディアを引き引き読み進めるのでは、読者さんにいい体験を提供しているとは言えないと思います。

 松坂 「閃光のハサウェイ」も劇場版が続いていきますし、0100年代が基礎教養になっていくといいですね。

 岡嶋 なってほしいですね! ぼく、「閃光のハサウェイ」が大好きなんです。特にギギが。大検を取っちゃったので高校は行ってないんですけど、ちょうど高校へ行っているくらいの歳にリアルタイムで読んだんですよね。すごく印象に残っている作品です。ハサウェイをきっかけに0100年代の作品が増えてくるといいなと思います。

 ただ、今すぐというわけにもいかないでしょうから、3作目を書くとしたら技術以外のところで分析軸を足さないといけませんよね。企業同士の血で血を洗う抗争を書こうかというアイデアもありましたが。

 松坂 マニアックですね。それは読者を選ぶかもしれない。

 岡嶋 書く方も相当、力量がないと料理できないから、いろいろ試されて怖いです(笑)。また、宇宙世紀の企業のデータって、そんなに潤沢にあるわけではないんです。あの世界の会社四季報が手に入れば、かなり書けると思うんですけど。

 松坂 宇宙世紀の会社四季報(笑)。それを作ってしまうとか?

 岡嶋 それ自体は魅力的ですが、そこまで創作にしてしまうと、読者さんの共感が得られないと思うんです。あくまで出典はきちんとしたクリエイターさんが作ったもので、それを分析することで成立した書籍ですから。

 あと企業ネタにした場合、ちょっとアナハイムが強すぎですね(笑)。昔、赤川次郎さんが小説作法について、「本当に困ってしまったときは、秘密結社を犯人にする」とおっしゃっていましたが、アナハイムも同じ使い方ができてしまうので要注意です。

 戦記物みたいに、会戦ごとにまとめていくのはアリですか?

 松坂 会戦ごとの分析は前例があったと思います。

 岡嶋 あー、それは残念です。光人社の戦記物のシリーズとか子どものころ大好きだったので、やってみたかったです。あとはコミカライズですかね、知り合いの絵師さんとちょっと着手したことはあったんです。

 松坂 ガンダムファンは目が肥えてるから、何を書くにしても大変です。

 岡嶋 それは本当にそうですよね。そういう方に向けて本を書くのはうれしい半面、とても怖いです。じゃあ、やっぱり誰かが会社四季報を書いてくれるのを待つのがいいかもしれません(笑)

【対談者略歴】

 松坂 豊明(まつざか とよあき) 「電撃B-magazine」「アニマガ」(メディアワークス)、「メガミマガジン」(学研)、「娘タイプ」(KADOKAWA)などの雑誌編集者を経て、現部署に。アニメの関連書籍などを手掛ける。

 岡嶋 裕史(おかじま ゆうし) 中央大学国際情報学部教授/学部長補佐。富士総合研究所、関東学院大学情報科学センター所長を経て現職。著書多数。近著に「思考からの逃走」(日本経済新聞出版)、「インターネットというリアル」(ミネルヴァ書房)など。

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