(岐阜県下呂市 湯屋温泉、2019年8月撮影)

【コラム:おんせん! オンセン! 温泉!】湯屋温泉 泉岳館

   日中の日差しはやさしく穏やかになり、夕方になると秋らしい涼しい風を感じるようになりました。大都市圏を中心に発令されていた緊急事態宣言が解除され、ワクチン接種も進んでいることから、この時季に遠出を考えている方も多いのではないでしょうか。

   もちろん、個々人の徹底した感染対策と意識は大切ですが、夏の疲れと自粛疲れを癒やしたい。そんな方におすすめの温泉があります。それが「ぬるめ」の温泉。体温前後の温度の温泉にじっくり漬かれば、心も身体もさっぱり爽快で、根っこから癒やされることでしょう。

 今回はそんな「ぬる湯」をじっくり堪能できる効能豊かな「炭酸泉」の湧く宿、岐阜県の「湯屋温泉 泉岳館」をご紹介します。

湯屋温泉街の中心に湧く「飲泉場」

 岐阜県下呂市の山あいに湧く湯屋温泉は、現在3軒の旅館が点在する静かで小さな温泉地。

 アクセスは東京都内から車で5時間以上。隣県の愛知県名古屋市からも2時間半かかり、ほどよく遠い道のりが、秘湯へやってきたという達成感を生み出してくれます。

 下呂市には全国的な知名度を誇る一大温泉地「下呂温泉」がありますが、この「湯屋温泉」も室町時代から約500年という長い歴史を持つ、知る人ぞ知る名湯です。そのゆえんは、天然の「炭酸泉」。都心のスーパー銭湯や入浴剤などでおなじみの「人工炭酸泉」ですが、天然のものはとても希少で、全国の温泉の2%ほどしか存在しません。そして、そのうちの一つが「湯屋温泉」なのです。

山あいの風景に溶け込む「泉岳館」の外観

 そんな湯屋温泉街の一番手前に位置する宿が「泉岳館」です。渓流沿いにたたずむ木造2階建ての旅館。3棟にまたがる建物は、客室が10室ほどのため、ゆったりと落ち着いて過ごせる広々とした造りです。「日本秘湯を守る会」の会員宿でもあり、館内のしつらえには純和風の温泉宿らしい情緒が漂います。

男女別内湯。2つの湯船はそれぞれ「熱め」と「ぬるめ」に分かれています

 お風呂は男女別の内湯と、貸し切りで利用する露天風呂「厳立」の2カ所(その他、露天風呂付きの客室あり)。泉岳館に湧く自家源泉で、湧出温度は12度ととても冷たいため、加温しての掛け流しで、それぞれ利用しています。

 内湯は2つの湯船があり、熱めとぬるめに分かれています。熱めといっても40度ほどのやさしい温度。ぬるめは体温ほどの「不感温度」に設定され、いくらでも漬かっていられます。不感温度の湯に身体を沈めていると、熱くもなく冷たくもなく、無重力の空間にふわふわと漂っているような心地よさ。湯上りはさっぱり感もあり、身体の芯まで温めつつ爽やかに楽しめる温泉です。

貸し切り露天風呂「厳立」

 泉質は、単純二酸化炭素冷鉱泉。含有する炭酸は、1200ppm/kgと高濃度です。炭酸の一番の効果は「血流促進」。皮膚から炭酸を取り込むことで血流が強制的に促進され、血圧低下の効果や、栄養素が全身に運ばれるため外傷の回復を早めたり、美肌の効果もあります。

 湯に入っていると、炭酸がシュワシュワと弾け、「銀の玉」のような気泡が身体中にびっしりとつき、まるでサイダーに漬かっているような湯浴みを楽しむことができます。

 ここの源泉は飲むこともでき、炭酸の喉越しが気持ちいい「天然のサイダー」を堪能。飲泉は胃腸に特効があるとされ、飲んで漬かって身体の内外から温泉の効能を体感することができます。

夕食一例。一つ一つ丁寧に作られた美食

 湯屋温泉を有する岐阜県は、魅力的な食材の宝庫。夕食は「飛騨牛のサイコロステーキ」「鮎の刺身、塩焼き」「皮ごと食べられる桃」などが並び、心が躍ります(メニューはプランにより異なります)。

 そのほか、源泉を利用した「下呂源泉ビール」や「源泉割のカクテル」に、朝食では「源泉がゆ」が登場し、カフェコーナーでは「源泉コーヒー」まで楽しめ、食事でも炭酸泉を味わうことができます。

泉岳館館内。落ち着いた和風のしつらえに癒やされます

   暑い夏を乗り越え、さらに自粛により心身の疲れを感じる今日この頃です。「ぬる湯」でさっぱりとした湯浴みを楽しみ、「炭酸泉」で免疫力アップを図り、心と身体をリフレッシュ。コロナ禍が日常化し油断できない中ではありますが、この状況を、温泉を活用し、元気に乗り切りたいものですね。

 

【湯屋温泉 泉岳館】

住所 岐阜県下呂市小坂町湯屋427-1

電話番号 0576-62-3010

URL https://www.sengakukan.co.jp

【泉質】

単純二酸化炭素冷鉱泉(低張性 弱酸性 冷鉱泉)/泉温12.2度/pH:5.7/湧出状況:動力/湧出量:毎分23リットル/加水:なし/加温:あり/循環:なし/消毒:なし

 

【筆者略歴】

小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は2000以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)。

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