ガノタの岡嶋教授、新著の裏話を編集者と語り尽くす【1/5】

 ガンダム好きの中央大学国際情報学部の岡嶋裕史教授は、今年1月に角川書店からマニアックな著書「ジオン軍の失敗」と「ジオン軍の遺産」を出版した。編集を担当した角川出版の松坂豊明さんと制作秘話を語った。

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 岡嶋 今月は私が書いた本で恐縮なのですが、「ジオン軍の失敗」「ジオン軍の遺産」制作を担当してくださったKADOKAWA ボイスニュータイプ&ビジュアルブック編集部の松坂豊明さんにお話を伺います。よろしくお願いいたします。

 松坂 よろしくお願いいたします。

 岡嶋 まずはマニアックな書籍を出版していただいたことにお礼申し上げます(笑)。あと! 表紙をArk Performanceさんに手掛けていただけたのも、KADOKAWAさんのおかげです。自分の人生にこんないいことがあっていいのかって、震えました。どうかよろしくお伝えください。

 書籍を構想するときって、著者は勝手に好きなものの企画を考えるだけですけれども、それを実際に商品として完成させるのは本当に大変だと思います。一番ご苦労された点は何ですか?

 松坂 「ジオン軍~」に限らず、ガンダムものは何でもそうですが、長い蓄積のある作品で、しっかりした世界観が確立されてますから、それを壊さないことですね。

 岡嶋 長く愛されている作品に関わるときは、すごく気を遣うし、怖いところですよね。ぼくもオタですから、作品に対する自分の思い入れに水を差されたら怒ると思うんです。ただ、人によって本当に作品の捉え方が違うので、気をつけていても誰かの地雷を踏み抜いてしまうことがあって、それが申し訳ないし、おっかないです。

 松坂 それでも書くんですよね(笑)

 岡嶋 それだけ魅力がありますし。あと、ガンダムは「これは書いちゃいけない」っていうコードがしっかり明文化されているので、かえって書きやすい部分もあります。よく言われるところでは、公的には「ファーストガンダム」はダメですよね。

 松坂 難しいですね。

 岡嶋 ぼくは小学生のときに、小説からガンダムの世界に入ったので、富野節が好きなんです。なので、リスペクトを込めてガンダムのことを「連邦の白い悪魔」と表現すると、それもNGだったり。

 松坂 富野さんだから許される表現はありますからね。

 岡嶋 それはそうですよね。ぼくも、自分の好きな作品について、よく分からない人がしたり顔でいろいろ書いてたら違和感ありますから。

 松坂 ガンダムの場合は多くのファンがそう感じるほど愛されていて、また情報量が多いのでさまざまな解釈を持ち得る作品だということかと思います。一家言ある方がたくさんいらっしゃいますから。

 岡嶋 それはもう。本を読んでいただいた方からおたよりをいただくときは、学会発表で「素人質問で恐縮ですが・・・」とか言われるのと同じくらい緊張します。

 松坂 絶対素人じゃないだろう、っていう(笑)

 岡嶋 解釈もさまざまですよね。これもコード化された部分があって、例えば「映像化されたものが正史」は、割とよく知られていると思います。実際に査読もしていただいているわけですが、それを踏まえた上でなお、「××は正史じゃない。したがって、この解釈は誤りである」というお叱りは受けたりします。そういう多様な鑑賞の仕方に耐え得るくらいの情報量がある作品は、なかなかないですよね。でも、これだけ情報量があると、作品感の調整ってものすごく大変じゃないかと思うんですが、どう管理しておられるのですか?

 松坂 私が関わっている部署では、長く作品に携わっているので、その辺のあんばいを熟知している人もいます。それこそ先ほどのお話と関わりますが、コミック媒体ですので正史扱いではない作品もあります。

 岡嶋 なるほど。作品にカジュアルに関われる余地があるのは、その作品が今後も発展したり、新しいクリエイターさんを育成する上では大きな利点ですよね。ただ、端から見ていると、それを踏まえても0070~0090年代はだいぶ作品が乱立している感があります。個人的には「閃光のハサウェイ」が公開になったことで、クリエイターの目が0100年代にも向くといいなと思ってるのですが。

 松坂 どうでしょう。まだ作品数が少ないところは、かえって萎縮しちゃうかもしれないですよ。岡嶋さん、いかがですか?

 岡嶋 ぼくはとても・・・。考えるだけで胃が痛くなります。

(次回へ続く)

「ジオン軍の失敗」https://www.amazon.co.jp/dp/B08SQBWF95/

「ジオン軍の遺産」https://www.amazon.co.jp/dp/B08SR9YJXQ

【対談者略歴】

 松坂 豊明(まつざか とよあき) 「電撃B-magazine」「アニマガ」(メディアワークス)、「メガミマガジン」(学研)、「娘タイプ」(KADOKAWA)などの雑誌編集者を経て、現部署に。アニメの関連書籍などを手掛ける。

 岡嶋 裕史(おかじま ゆうし) 中央大学国際情報学部教授/学部長補佐。富士総合研究所、関東学院大学情報科学センター所長を経て現職。著書多数。近著に「思考からの逃走」(日本経済新聞出版)、「インターネットというリアル」(ミネルヴァ書房)など。

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