【対談】デジタルが世界を変える(後編)

 大日本印刷コンテンツコミュニケーション本部・浅羽慎太郎さんと中央大学国際情報学部の岡嶋裕史教授が、デジタルの可能性について話し合った対談の後編。仮想現実(VR)などのxR技術とキャラクターの組み合わせが、地域格差や教育現場の問題解決の有効なツールになると浅羽さんは訴えた。

前編:https://b.kyodo.co.jp/business/2021-04-28_7496190/

xRとキャラクターが問題解決のツールに

 岡嶋 前回に引き続き、大日本印刷株式会社コンテンツコミュニケーション本部の浅羽慎太郎さんにお話を伺います。

 前編では、xR(「仮想現実(VR)」「拡張現実(AR)」「複合現実(MR)」などの総称)を既存資源の価値向上につなげていこうという力強いお話を伺いました。書店などの実例を挙げていただきましたが、その他の分野でも取り組みを進めていらっしゃいますか?

 浅羽 はい、個別のアセットだけでなく、都市空間をxR化することで大きな価値を生んでいけると考えています。ロケーションオーナーの期待を感じます。また、xRの活用に際しては、バーチャル接客やキャラクターを使ったコミュニケーションが重要な意味を持ってきます。その点でもわれわれはFUN’S PROJECTなどの取り組みを通じて、知見と経験を積み上げています。

 日本はいま、地域格差や、年齢・性別による偏見などさまざまな問題を抱えていますが、xRとキャラクターの組み合わせはこれらの問題を解決する有効なツールだと考えています。

 もちろん、単一のツールを投入してすべての処方箋になるような根の浅い問題ではありませんが、これらのツールを有効活用していくことが重要です。

 岡嶋 xR技術やバーチャルキャラクターは、単にエンターテインメントとして消費するだけではもったいないですね。私もガイドキャラクターを使うことで、勉強に苦手意識を感じている学生・生徒さんの初学のハードルを下げたり、学習の離脱率を改善するようなコンテンツを作り続けてきたので、すごく共感できます。

 浅羽 そうですね。日本の活性化につなげられると思います。

 岡嶋 私は教育に関わっている人間ですので、教育分野での御社の取り組みにはすごく興味があります。先日はファンズちゃんにも授業をしていただいて、ありがとうございました。

ファンズちゃんによる大学の授業

技術の活用で学校現場に余裕を

 御社として手掛けているものでは、他にどのような事例がありますか?

 浅羽 ここ数年で、かなりの数の専門学校を訪問したんです。そこで強く感じたのは、地域格差がこんなに大きくなっているのか、ということです。就職ひとつを取り上げても、講師や関連企業が多く、ほぼ100%の就職率を誇るエリア、反対に講師不足や、関連企業が少なく、卒業してもほぼ就職が見込めないエリアなど極端な開きがあります。

 岡嶋 それはとても分かります。まず地域や既存資源という初期条件で、集客がまったく異なってしまいます。大きな母集団からより優秀な学生を集められた学校と、それがかなわなかった学校の間には、どうしても差が生じてしまいますね。その差は最初は小さなものでも、徐々に、しかし不可逆的に拡大して、やがて巻き返すのが不可能なほどの間隙になってしまいます。ウェブサイトが人気を集めたり、没落したりするメカニズムに類似していますね。

 浅羽 そうなんです。とはいっても、「初期条件を変更する」ことは多くの学校にとって困難でしょう。それを解消する強力なツールがオンラインの授業だと思うんです。いまは、運営がうまく行っている学校ですら業務の肥大化が進んで、各種のリソースが足りません。

 岡嶋 資金的にも時間的にも人的にも、つらい状況が続いています。文部科学省の「#教師のバトンプロジェクト」などでも表面化していましたね。私はあれを発案した担当者って、確信犯だったと考えています。

 浅羽 リアルのリソースはそうそう増強がかなうものではありませんが、オンラインはそれをリセットしやすい状況にあります。

 岡嶋 確かにそうですね。仮にそれらが潤沢な学校があったとして、リアルの土地や教員といった資源を気軽に他の学校に譲れはしませんが、授業の中で形作られたコンテンツや、そのパーツとしてのドキュメントやキャラクターは、困っている学校や先生とシェアできる可能性がありますね。

 ゲーミフィケーションなどとも親和性が高いので、学習に困難や倦怠(けんたい)を抱えている学生・生徒さんにも訴求できる教育パッケージを作りやすい側面もあります。

 浅羽 われわれの取り組みもまさにそこに焦点を当てていて、恒常的なリソース不足に悩まされている学校現場に、われわれの技術を活用することで少しでも余裕が生まれて、先生も生徒も生き生きと学習してもらえればと思っています。

 岡嶋 私はゲームやアニメが好きなので趣味と実益を兼ねて研究していますが、キャラクターやゲーミフィケーションが社会のさまざまな場面で役に立ったらうれしいですね。

■DNPクリエイター共創サービス「FUN’S PROJECT」:https://funs-project.com/

■FUN’S PROJECT公式キャラクター「ファンズちゃん」OFFICIAL WEBSITE:https://funs-project.com/funschan/

【対談者略歴】

 浅羽 慎太郎(あさば しんたろう) 大日本印刷コンテンツコミュニケーション本部 コミュニケーションビジネス開発部 営業・プロデュース課。

浅羽慎太郎さん

 岡嶋 裕史(おかじま ゆうし) 中央大学国際情報学部教授/学部長補佐。富士総合研究所、関東学院大学情報科学センター所長を経て現職。著書多数。近著に「思考からの逃走」(日本経済新聞出版)、「インターネットというリアル」(ミネルヴァ書房)など。

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