FUN’S PROJECT 大日本印刷のクリエイター共創サービス © Dai Nippon Printing Co., Ltd.

【対談】デジタルが世界を変える(前編)

 現実社会をデジタル空間で再現する「ミラーワールド(鏡像世界)」、アニメやゲームなどのクリエーターやコンテンツホルダーとファンをつなぐクリエイター共創サービス「FUN’S PROJECT」など、大日本印刷は、デジタル事業に力を入れている。中央大学国際情報学部の岡嶋裕史教授と大日本印刷コンテンツコミュニケーション本部の浅羽慎太郎さんが、デジタル分野の最前線と可能性について話し合った。

印刷会社が仮想現実やキャラクタービジネス

 岡嶋 本日は大日本印刷コンテンツコミュニケーション本部の浅羽慎太郎さんにお話を伺っていきます。浅羽さんは大日本印刷の「FUN’S PROJECT」を率いておられる方で、以前からコンテンツとアカデミックの連携に一緒に取り組んでいました。

 コロナ禍以前から、オンライン授業の価値向上は研究テーマだったのですが、それが喫緊の課題として立ち現れたので、研究を加速させている状況です。

 大日本印刷がxR(「仮想現実(VR)」「拡張現実(AR)」「複合現実(MR)」などの総称)とかキャラクタービジネスに取り組んでいるというのは意外に思われる方も多いかと思うので、そのへんから伺えますか。

 浅羽 実はxRには非常に力を入れています。最近話題を集めているミラーワールドにも取り組んでいて、テレビ東京の「池袋ミラーワールド」にも参画しています。具体的には池袋ミラーワールド内の施設の一つである「バーチャルジュンク堂書店 池袋本店」のプロジェクトマネジメントをしています。3月27日にスタートしました。

池袋ミラーワールド

 岡嶋 著者の立場で言うと、2020年の出版業界は濃淡はありつつも、結構売上を伸ばした企業、部署がある印象です。一人の時間ができたので読書される方が増えたのかと思いますが、書店さんはどうでしょうか。

 浅羽 本を読む方は増えましたね。ただ、外出を制限されているがゆえに、書店に足を運び、本を選んで購入する行為を容易にできなくなった方がいるのは事実です。また、紙媒体からデジタル媒体への移行も進む中で、一印刷会社の枠を超えて、出版社さんや著者さんが持っているさまざまな価値を引き出すお手伝いが重要なミッションだと考えています。

ジェンダーを乗り越える手段として活用

 岡嶋 なるほど。本を買うだけなら、ウェブサイトで代替できるというか、ウェブサイトの方が本筋になっていくでしょうが、潜在的な価値を表現すること、体験することを目指すのであればxRを志向していくのは自然な流れかもしれませんね。

 浅羽 書店の役割というのは、単に本の売買だけではないと思うんです。もちろん、それはゴールかもしれないのですが、コミュニティーをつくって読者同士のコミュニケーションを促したり、展示会を催して思いがけない書籍との出会いを演出するのも大事な機能だと思います。

 岡嶋 それには深く同意します。学校も、知識や技能の伝達をしていくことがミッションの機関です。それだけであれば、書籍を渡して、分かりにくいポイントを動画やイラストを交えながら解説して、LMS(学習管理システム)で質問を受け付ければ、対面とオンラインで同等の機能を実現することができます。

 しかし、コミュニティーを提供し、偶発的な意見や人との出会いを提供するのも、学校の重要な役割なんだと思います。そのためには、オンライン会議システムでは不十分です。

 浅羽 そうなんです。コロナの影響を除いて考えたとしても、人と人とのコミュニケーションが難しい時代に入っています。また、たとえばLGBTQ(性的少数者)の方々などがジェンダーを乗り越える手段の一つとして活用することもできると考えています。

 アバターは肩書きや属性を見えなくする効果があるので、より自由なコミュニケーションをつくっていくことに寄与するのではないでしょうか。

イメージキャラクターのファンズちゃんが活躍

 岡嶋 私自身はミラーワールドやデジタルツインよりも、メタバースに魅力を感じていますが、こうした仮想世界やxR技術にはさまざまなハードルや前提条件を無効化する力がありますよね。事故で障害を負ってしまった方や、高齢で体が不如意になってしまった方が、以前のように激しいスポーツを楽しんだり、リアルでは高額でなかなか手が出せないスポーツにeスポーツで挑戦したりといったことで、より自由で楽しい社会をつくるうれしさがあります。国際オリンピック委員会が、2021年5月13日に公式競技としてOlympic Virtual Seriesを開催するのが象徴的です。eスポーツ5種目のうち、2種目が日本のコンテンツになったのは喜ぶべきことだと思います。

 浅羽 われわれが行ってきたクリエイター共創サービス「FUN’S PROJECT」は、そこに気持ちよくひも付いたと考えています。当初はクリエイター、コンテンツホルダー、ファンをつなぐサービスとして企画しましたが、いろいろな会社や団体、クリエイターの皆様のご協力を得て、イメージキャラクターであるファンズちゃんが直接的にお客様とコミュニケーションを取れるようになりました。ラベリングしてしまうと、バーチャル接客サービスになると思うのですが、それを超えてB to Cの素晴らしいツールになっていると感じます。

 ボランティアの高校生などとコミュニケーションを取るとき、やはり大人相手だとすごく警戒したり、言葉を選んだりして、なかなか率直なコミュニケーションが難しいのですが、ファンズちゃんというキャラクターを介することで、高校生が最初から心を開いてくれるようになりました。とても心を打たれる光景でしたね。

■DNPクリエイター共創サービス「FUN’S PROJECT」:https://funs-project.com/

■FUN’S PROJECT公式キャラクター「ファンズちゃん」OFFICIAL WEBSITE:https://funs-project.com/funschan/

■池袋ミラーワールド:https://www.mworld.jp/

【対談者略歴】

 浅羽 慎太郎(あさば しんたろう) 大日本印刷コンテンツコミュニケーション本部 コミュニケーションビジネス開発部 営業・プロデュース課。

 岡嶋 裕史(おかじま ゆうし) 中央大学国際情報学部教授/学部長補佐。富士総合研究所、関東学院大学情報科学センター所長を経て現職。著書多数。近著に「思考からの逃走」(日本経済新聞出版)、「インターネットというリアル」(ミネルヴァ書房)など。

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