【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】続・教育委員会とわたし
【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】続・教育委員会とわたし

【がんを生きる緩和ケア医・大橋洋平「足し算命」】続・教育委員会とわたし

2020年12月7日=610
*がんの転移を知った2019年4月8日から起算


今回は教育シリーズの2回目。

私は緩和ケア医である傍らで、地元・三重県木曽岬町の教育委員会で教育委員を拝命している。消化管間質腫瘍(ジスト)を患う以前の2013年からなので、もう7年がたつ。そんなわけで教育関係者のはしくれとして学校教育について、思うことを申し上げたい。

前回は教育の【No more】をつづった。今日は【こんなん、どぉ】の提案をしたい。今はコロナ禍だからあまり行われてないだろうが、収束したら行われるであろう「小学校」のイベントで。中学、高校と進むにつれて、なかなか自由な発想は許されにくいイメージが私の中ではあるからだ。

三重県南部で生まれ三重県北部の我が家で育つコケ
三重県南部で生まれ三重県北部の我が家で育つコケ

【児童による授業参観】保護者のやることはまねする

通常、授業参観と言えば、保護者が子の通う学校において、授業参観用にあらかじめ決められた授業を見るものだ。
私が小学校のころ来ていたのは母親がほとんどだった。ただし己の保護者が来ていようがいまいが、ほとんどは「よそ行きの時間」となりがちだ。後ろに大人たちの目が光っているからである。

小6ともなれば、6年間の授業参観を経て、同級生の保護者たちとも顔なじみとなる。1学年に2クラス、場合によっては1クラスというわが町であれば、なおさらである。

いやぁこの感覚、とってもええなぁ。絆も深まって。おせっかいおじさんやおばさんに囲まれる。

この授業参観をぜひ逆さまにやってみたい。具体的には、イスに座り机に向かった保護者を、彼らの子である児童が参観するのだ。

保護者たちは小学校で習ったはずの漢字が今は書けない。算数の計算だって難しいぞ。掛け算や割り算の筆算って、どうやるんだっけ・・・自宅で振りかざしていた保護者の権威は大失墜?!

いやいや、そんなことは無い。この弱みを見せることも人間関係を良好に向かわせるのに必要だ。これで保護者も少しは襟を正せるようになるかもしれない。

児童たちも家庭で「もう宿題やったんかぁ」とパワハラ・保護者ハラ言葉をさく裂させている大人たちを、背中から監視できるのである。私が児童ならば大満足であり、うきうきすることだろう。

子どもは保護者のしていることに興味がわくものだ。例えば読書する保護者たちの姿を見ると、小学生も自然にまねすることだろう。小学校低学年のころ私も休日にオヤジの職場に付いていった時、ワクワクしたうれしい思い出がある。「子は保護者の言うことは聞かないけど、保護者のやることはまねする」はよく聞くフレーズだ。

【右回り運動会】競馬でも右回りに強い馬がいる

みなさん、小学校時代の運動会を思い出してくだされ。どっち向きに走ってましたか?

恐らくコースはだ円形で、左回りでしょう。でもこれは何も小学校の運動会に限らない。陸上競技の競走部門でもこの走り方(反時計回り)である。今年は見られなかったオリンピックもしかり。

なぜ人は左回りで走るのか。これには、人間は利き手が右手で踏み切りは左足が多いことから左足で重心を支えるからとか、人体では心臓がやや左よりにあることから重心が左半身にかかりやすいから、などと諸説あるが、あくまでも仮説にすぎないようだ。

この左回り走りを、右回りでやってみようという話である。いやぁどっち回りでも速い子は同じやろ、と考える人が多いかもしれない。確かにおっしゃる通りだが、果たして全てそうだと言い切れるか。確固たる根拠は示せないが、そう思う理由がちょこっとある。

実はわたくし、ある特定生物への投資をしばしば週末に行う。前回まさかクリソベリルが4着に沈むとは…。いつも同様に全額寄付させてもらった、JRAさまに。

JRAのレースは、ほとんどが右回りだが(JRA全10会場中7カ所)、東京・中京・新潟は左回りである。もちろんここでも速い馬はどちらでも速い。

しかし一方の向きでは無類の強さを示すのに、他方の向きではいまひとつという馬が、時には存在する。先月の11月、前人未到のGⅠ9勝を挙げて引退したアーモンドアイも、それを示している。ここからは引退した馬だが、例えばドリームジャーニー。右回りではGⅠも勝利するのに左回りは弱い。一方ウォッカ。左回りはGI勝ちなのに、右回りでは負ける。

ここで運動会の話に戻る。つまり右回りにすると、速くもなれば遅くもなる可能性が生まれるのである。従って運動会は年2回、春と秋で回り方を変えて実施する。面白いやないか。やる気の出る児童も出てくるはずだ。

初秋の西空(三重県志摩市)
初秋の西空(三重県志摩市)

【先生へサプライズギフト~テスト】児童の得意分野で出題

通常テストは教師が児童に出すのが、この業界の常識だ。教える師だからである。
それでは児童の持つ知識や技術というのは、すべてにおいて教師よりも低いだろうか。そうとは限らないと私は思う。そこで児童ができること、好きなものをテーマに先生に対するテストを作ってみてはどうだろう。

今は小学校でも英語が教科になっているから国数理社英の5教科でもOK。習字や珠算などの習い事。歌や楽器、さらには絵画など芸術関連。野球、サッカー、水泳といったスポーツや、もちろんゲームも大歓迎だ。

ただし、そうは言ってもテストは簡単には作れないだろう。しかし作ること自体が、その知識や技術を高める結果となる。
一方、もしある児童がテストを簡単に作れたならば、その分野において彼はもう博士である。これはこれで素晴らしい。二物は要らない。一芸に秀でる、これで十分だ。

テストを出された先生はどうか。1クラス30人いれば、30通りのテストが身にふりかかる。先生だって0点を取るかもしれない。
とにもかくにも児童30人それぞれの関心事に触れられる。その絶好な機会を先生自らではなく、児童各自が勝手に知らせてくれるのである。こんなありがたいことはない。

これぞ正しく夏休みの課題(もちろん、するもせぬも個人の自由)にしたらどうか。夏休み明け9月から先生方を大いに奮闘させてやろうじゃないか。

以上、またまた現場に出ぬイチ教育関係者が勝手申し上げました。お付き合いくださり、とってもうれしいです。

今日2020年12月7日アサを迎えて、足し算命は610となりました。すべてのモノさま、本当にありがとうございます。

(発信中、フェイスブックおよびYоuTube“足し算命520”


おおはし・ようへい 1963年、三重県生まれ。三重大学医学部卒。JA愛知厚生連 海南病院(愛知県弥富市)緩和ケア病棟の非常勤医師。稀少がん・ジストとの闘病を語る投稿が、2018年12月に朝日新聞の読者「声」欄に掲載され、全てのがん患者に「しぶとく生きて!」とエールを送った。これをきっかけに2019年8月『緩和ケア医が、がんになって』(双葉社)、2020年9月「がんを生きる緩和ケア医が答える 命の質問58」(双葉社)を出版。その率直な語り口が共感を呼んでいる。


このコーナーではがんと闘病中の大橋先生が、日々の生活の中で思ったことを、気ままにつづっていきます。随時更新。

『 足し算命

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