あいおいニッセイ同和損害保険の金杉恭三社長

「新しい生活」における損害保険への挑戦 あいおいニッセイ同和損保の取り組みとは?

 いざという時のために加入するのが「保険」だ。車の運転には自信があるという人も、絶対に事故を起こさないとは限らないので自動車保険に入る。火災保険だって同じだ。もし、自宅が火事になった場合、損失を自費で賄うのは大変だから加入する。しかし、さまざまな起こり得る想定を超越して襲ってきたのが「新型コロナウイルス」だ。

 緊急事態宣言が5月25日に全面解除され、ほとんどの飲食店は営業を再開したが「もし、店から感染者が出たら…」と考える経営者は多い。損害保険の中には感染症に関する損失の特約がある商品もあるが、商品開発時に想定していなかった新型コロナは対象外とするものがほとんどだ。

▽新型コロナも補償

 そんな中、あいおいニッセイ同和損害保険(東京都渋谷区、金杉恭三社長、以下、あいおいニッセイ同和損保)の企業向け賠償保険は、食中毒などの発生で休業した場合の特約として大手損保の中で唯一、新型コロナに対応した保険商品だ。 例えば、店で感染が起き、休業して消毒をする必要が出た場合、減少した利益などに対して補償する。年間売上額3,000万円の喫茶店の場合、年間1万6,650円を支払うことで、補償期間1カ月に対して最大30万円を限度に補償がある。「新型コロナの感染が全国に広がった5月末時点での過去1年間の契約数は、その前の1年間と比べ5割増になった」(広報部)という。

▽「未知の感染症」にも対応

 また、MS&ADインシュアランスグループは6月29日、新型コロナによる休業を補償する商品を2021年1月から販売することを発表した。傘下のあいおいニッセイ同和損保と三井住友海上火災保険(以下、三井住友海上)が、店舗など施設で新型コロナウイルス感染症が発生した場合、休業日数に応じて最大500万円まで補償する。この保険は「未知の指定感染症」も想定、新型コロナ以外の新たなウイルスなどによる休業損害にも20万円の保険金が支払われる。

▽「テレワーク保険」誕生

あいおいニッセイ同和損保でもテレワークを実施。在宅勤務中にオンラインシステムを使って打ち合わせをする社員

 

 さらに、ユニークな新商品も登場した。ウイルス感染防止のため、テレワークを導入する企業が増えたが、急ごしらえの実施も多く、さまざまな課題が指摘されている。あいおいニッセイ同和損保と三井住友海上は、テレワークを取り巻くリスクを補償する「テレワーク総合補償プラン」の販売を5月から始めた。

 テレワークは社員のウイルス感染予防には適しているが、自宅のパソコン環境で仕事をするため、“コンピューターウイルス”に感染するリスクが高まる。プランの一つである「サイバーセキュリティ保険」(三井住友海上は「サイバープロテクター」)は、サイバー攻撃や、業務用パソコンを持ち出した際の盗難・紛失などによる情報漏えいが起きた際に補償する。「動産総合保険」は業務用パソコンやタブレットが盗難や破損した場合などに対応する。

 使用者賠償責任は「上司から頻繁に在席確認があるため、パソコンの前から離れられない恐怖感にとらわれ、精神障害が生じた」などの場合に補償。雇用慣行賠償責任は「オンラインミーティングで映り込んだ部屋の様子を『派手だった』などと社内で言いふらされた」といったプライバシーの侵害について対応する保険だ。販売は始まったばかりだが「近年まれに見る反応」(広報部)としている。

▽アスリートにも影響

第20回全日本ブロック選抜 車いすバスケットボール選手権大会でプレーする秋田啓選手=2018年11月

 

 あいおいニッセイ同和損保は、スポーツ支援にも力を入れている。損害保険会社ゆえに、車いすバスケットボールの選手の多くは自動車事故が原因で車いす生活になったことを知り、2014年に障害者スポーツ支援をスタートさせた。翌年からアスリート雇用など支援を広げ、2019年には“史上最強の市民ランナー”として

 知られたマラソンの川内優輝さんが所属契約選手となるなど、21人のアスリート(うち、パラ選手14人)が所属している(2020年6月現在)。川内選手ら2人を除く19人が社員で、選手たちは仕事をしながら練習を続けている。

 新型コロナは選手たちにも大きな影響が及んだ。岐阜サービスセンター(岐阜市)の秋田啓さん(30)は、車いすバスケットボールの日本代表にもなり、東京パラリンピックの有力候補選手の一人だ。自動車保険関連の業務に携わり、仕事の後などに地元の車いすバスケのチームで練習を重ねてきたが、新型コロナで公的な体育館が使えなくなった。

岐阜サービスセンターで仕事をする秋田啓さん

 

 さらに東京パラの1年延期が決まる。秋田さんは「パラリンピックは自分としては初めてだし、周囲も期待していたので残念だった」と話す。気持ちを切り替え、自宅や屋外の公園などで自主トレーニングを実施。緊急事態宣言解除後は、チーム練習で接触プレーの時間を減らすなど工夫しながら「改めて1年後に向かっていくだけ」と意気込んでいる。

▽元なでしこジャパンのメンバーも

ジェフユナイテッド市原・千葉レディースでプレーする大滝麻未選手 (C)JEFUNITED

 

 大滝麻未(おおたき・あみ)さん(30)は、女子サッカー・フランス1部リーグ「オリンピック・リヨン」とプロ契約していた時に日本代表「なでしこジャパン」にも“海外組”として招集された実績を持つ。2019年3月にあいおいニッセイ同和損保に入社、広報部で社内報webの業務に携わっている。仕事を終えると、現在所属しているジェフユナイテッド市原・千葉レディースの練習に向かう。東京五輪の延期に関しては「時間の猶予が与えられ、チャンスをもらった」と前向きにとらえている。

 あいおいのアスリート支援について、大滝さんは「一方的な支援ではなく、アスリート側もスポーツ講演会をするなど存在価値を提供している」と話し、企業としての理想的な支援スタイルだと強調する。

「男女共同参画週間 企業協力講座」
で講演する大滝麻未さん=2019年6月、東京都府中市

 

 また、緊急事態宣言中の5月1日から、社内報webや公式フェイスブックで所属アスリートが社内外にメッセージを発信する「アスリート応援バトンリレー」を実施。外出自粛の社員を激励するなどの活動も、アスリート社員ならではの取り組みだ。

▽変わる保険の在り方

 新型コロナウイルスは、多方面であらゆる人に影響を及ぼした。影響の受け方はさまざまだが、損害保険の在り方を見直すきっかけにもなった。金杉恭三社長は「新型コロナウイルスの影響で、テレワークやリモート会議などデジタル化が一気に進んだ。保険に関しても、これまでのような『対面・押印・書面』の見直しが求められ、業務の変革をもたらすことになる」と話す。

 その上で「一方で『人と人』のアナログな関係も必要で、両方のコミュニケーションを活用したい。今後は『新しい生活様式』が求められ『もう元に戻らない』だろう。保険の世界も、あらゆる分野・領域で『新常態』に移行していく中で、新たなビジネスチャンスをつかんでいきたい」とコロナ後を見据えている。

 幕末から明治維新にかけて海外から入ってきたとされる保険制度。福沢諭吉や坂本龍馬が発案したとも日本に紹介したともいわれるが、真偽はさておき、その長い歴史の中で訪れた新型コロナ危機。改めて「保険」の存在をクローズアップさせることになったと言えそうだ。

※写真は「あいおいニッセイ同和損害保険提供」 

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