【コラム】ケーブルのごちゃごちゃ、USBで解消したけれど…

 ケーブルは昔から嫌われものだった。

 絡むし、引っ掛けるし、落とすし、転ぶし。

 技術者は、あまり気にしていない人もいたし、中にはケーブルがスパゲティになっているのを見てフェティッシュ(偏愛)な感情を喚起される人もいたけれど(ぼくのことだ)、堅気の人はまずあれを愛せない。

 だから、ケーブルが無線に置き換わったり、せめて同じ有線でも数を減らしたりする方向へ集約していくのは自然なことである。

 いま、たいていのものは無線接続になった。

 ちょっと前まで、有線で結線するのが当たり前だったキーボード、マウス、プリンター、ストレージ、LAN、イヤホンなどは、ちょっとした手間とお金を厭(いと)わなければ無線に置き換えることができる。

 無線に置き換えられていない主要な経路は、電力くらいのものである。

 研究は盛んに行われているが、達成できている給電容量と給電距離を考えると、実用化にはまだ時間がかかるだろう。

 積極的に有線ケーブルが使われている分野は、何らかの給電が絡んでいることが多い。給電側も、ケーブルが好ましく思われていないことは分かっているので、何かの機能と抱き合わせにしようとする。例えば、家庭ではあまり聞かなくなってしまったが、電力線通信などが実用化された。電源と通信を一緒にしたものだ。一緒にすれば、リビングからケーブルを1本減らせる。

 機器を接続するケーブル類も、どうせなら給電も同時にできるように画策した。構内通信用のイーサネットケーブル(LANケーブル)は、給電もできるように進歩した。

 このように、有線ケーブルであっても、1本でいろいろなことができるよう各種規格がしのぎを削っている中で、USBの存在感が増している。

 それはそうだろうと思う方も多いだろう。

 USBはユニバーサル・シリアル・バスの略語で、当初からケーブル類を統一するために開発された規格だ。キーボード用、マウス用、ディスプレー用、周辺機器用などと用途によって分かれていたケーブルや差し込み口を、一つにまとめたのである。そのコンセプトは秀逸で、やり方さえ間違えなければ勝利は約束されていた。

 でも、その“やり方”は、すごく洗練されていたわけではなかった。

 初期のUSB規格では、パソコンと周辺機器の接続が重視されていたので、パソコン側のAコネクター、周辺機器側のBコネクターと差し込み口の形状が分かれていた。さらに、それぞれにスタンダード、ミニ、マイクロの各サイズがある。

 差し間違えがないようにとか、周辺機器の省スペースを考慮しての結果であることは分かるし、むしろ熟慮の結果の仕様ではあるのだが、やはりいろいろあって使いにくかった。

 風向きが変わったのは、給電性能が強化されて以降だ。いまでは、USBを信号線として使わず、単に電源ケーブルとして使う人までいる。USB扇風機などが良い例だ。そして、タイプCコネクターが登場する。パソコン側でも、周辺機器側でもケーブル形状を変えず、差し込むのは裏表どちらの向きでも機能する。

 これで本当にケーブルの数を減らせるようになったし、使いやすくもなった。同様の規格にアップルの「ライトニング」があるが、アップルもタイプCの採用を進めているし、そもそもUSB規格に対して積極的に関わり、主導権を握るようになった。今後、高速信号線と電力線の統合はますます進み、その中で生き残るのは当面USBになるだろう。

 USBに弱点があるとしたら、アップデートが繰り返されてきたことによるバージョンの多さである。通信部分だけでUSB1・0、1・1、2・0、3・0、3・1、3・2、4があり、数字が大きくなるほどデータの転送速度が速い。ここに形状や給電能力の差まで加わる。分かりやすくするために、各規格にスーパースピードUSBなどの愛称もつけたが、分かりにくさに拍車がかかった。

 USB4ではこの反省から、すっきりした番号体系にすることがアナウンスされている。きっとタスクグループはこれを達成するだろう。最初のうちは。規格というのは、「刷新しよう」と決意したときはすっきりするものなのである。いまは「ない」と約束しているが、そのうち4・1、4・2が出てこないように祈りたい。

【筆者略歴】

 岡嶋裕史(おかじま・ゆうし) 中央大学国際情報学部教授/学部長補佐。富士総合研究所、関東学院大学情報科学センター所長を経て現職。著書多数。近著に「ブロックチェーン」(講談社)、「いまさら聞けないITの常識」(日本経済新聞出版社)など。

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