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【コラム:おんせん! オンセン! 温泉!】国見温泉石塚旅館

 温泉旅行に出掛けたら、無色透明な温泉よりも「色」や「濁り」があると「温泉情緒」がかき立てられます。温泉の「色」で思い浮かぶのは「乳白色」が一般的だと思いますが、日本中を見渡すと、赤、茶、黄、黒、青、灰色などさまざまな「色」の温泉が存在します。その中でも特に珍しい色の温泉が岩手県の山奥に湧いています。その色は「エメラルドグリーン」。目にも鮮やかな美しいお湯です。

岩手県雫石町の山奥に湧く「国見温泉」(2016年8月撮影)

 その温泉は岩手と秋田の県境・雫石町に位置する「国見温泉」です。最寄りの新幹線・雫石駅から、タクシーで20分ほどのアクセスで、車であれば盛岡市街から1時間ほど走った山奥にあります。この辺りは、青森、秋田、岩手にまたがる「十和田八幡平国立公園」の最南端に位置し、大自然にあふれています。標高880メートル、ブナの原生林やクマザサが生い茂り、山の息吹を身近に感じることができます。秘境ということと、冬季は非常に雪深いエリアのため、毎年11月中旬から5月の初旬まで、温泉地ごと休業しています。

国見温泉の湯元「石塚旅館」

 開湯は1804年と、200年以上の歴史を誇ります。当時は南部藩の湯治場として栄えたそうです。現在は2軒の旅館と1軒の日帰り温泉施設が営業しています。温泉地の一番手前にある「石塚旅館」は、国見温泉の開湯当時から残る湯元の旅館。旅館というよりも山小屋風の趣のある外観が、周囲の景色に溶け込んでいます。「日本秘湯を守る会」の会員宿でもあり、老舗にしか出せない重厚な風格が漂っています。

美しいエメラルドグリーンのお湯

 「石塚旅館」には、新館と本館にそれぞれ男女別の内湯、本館に混浴と女性用露天風呂があり、旅館の中でさまざまなお風呂を楽しむことができます。

 泉質は、含硫黄―ナトリウム―炭酸水素塩泉。濃厚な硫黄と石油のような香りの共存する強烈に個性的なお湯です。そして何よりこの色! まるで入浴剤の「バスクリン」を入れたかのような鮮やかな「エメラルドグリーン」です。見るだけでも目の保養になります。また、「硫黄」と「重曹」という美肌成分をダブルでたっぷり含む源泉は、湯上りはお肌スベスベサラサラで透き通るような「美肌」を実感できる「美人の湯」です。全てのお風呂が、加水・加温・循環・消毒なしの源泉100%掛け流しで、新鮮な源泉の個性をダイレクトに感じることができるぜいたくな湯づかいが非常にうれしいところです。

大自然を全身で感じられる露天風呂

本館の内湯から外に出られる扉があり、そこから裸のまま少し歩いたところに混浴露天風呂があります。露天風呂にもよく映える美しいエメラルドグリーンの湯色と、国立公園内という大自然が、ワイルドな気分にさせてくれます。山の緑の香りに、温泉の硫黄と石油の香りが重なる野性的なアロマセラピーもここだけでしか味わえない醍醐味(だいごみ)です。

 このお湯は飲泉することも可能で、飲むと胃腸に良く効くことから、昔から「薬師の湯」と呼ばれ親しまれていたそうです。その味は強烈で、苦くて渋くてまるで胃腸薬の「正露丸」をお湯に溶かして飲んでいるような味でした。「良薬口に苦し」とはよく言ったもの。とても身体に効きそうな味です。

 現在は3軒の施設が営業する小さな温泉地ですが、それでも夏場のトップシーズンには、観光客・湯治客のほか、温泉地から秋田駒ケ岳への登山ルートが人気のコースになっていることもあり、多くの登山客でにぎわいをみせます。冬の期間は休業ですが、11月の初めや、5月の中頃は運が良ければ「雪見露天」も楽しめるそうです。

 岩手の山菜、肉や魚にこだわった、地産地消の食事も魅力。天然の“バスクリン”と国立公園内という山の大自然を、心行くまで堪能しませんか。

【国見温泉石塚旅館】

住所:岩手県岩手郡雫石町橋場国見温泉

電話番号:090-3362-9139、019-692-3355

URL http://www5.famille.ne.jp/~kunimihp/index.html

【泉質】

含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩泉(低張性中性高温泉)/泉温:49.8度/pH:6.8/湧出状況:-/湧出量:-/加水:なし/加温:なし/循環:なし/消毒:なし/完全掛け流し/飲泉可

【筆者略歴】

小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。 交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は1800以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)。

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