コミック8

【生産性を上げる会議術】第8回 アイデアが出ない時のファシリテーションのやり方とは?

■はじめに

 「この件についてブレストしてみましょう。何かアイデアはありますか?」。会議室にむなしくしみ入る司会の声。このようなアイデアが全く出ない会議に参加したことがないだろうか。

 第3回「会議の設計の仕方 人選・環境・時間編(https://b.kyodo.co.jp/business/2019-03-19_1772366/)」でも取り上げたが、会議でのアイデア出しはあまり効率がよくない。特に参加者が6人以上の場合、各自がバラバラにアイデアを出した方が質・量ともに上回るという実験結果もある。

 ただ、この結果を受けて、アイデア出しは必ず各自バラバラにやるべきだというつもりはない。皆で一緒にアイデアを出した時の盛り上がりや腹落ち感が、その後の皆の行動を左右するからだ。前回紹介した通り、皆が腹落ちしたアイデアに対しては、コミットメントが高まる。他方で、決定事項として上から降ってきただけのアイデアは、コミットメントが得られないばかりか、抵抗を招くことが多い。

 どんなにいいアイデアでも、実現されなければ価値がなくなるので、その実現可能性を高められるのであれば、多少効率が悪くても時間を投資する価値がある。

 では、どのようにすれば皆からアイデアを引き出すことができるのだろうか。今回はそのテクニックを紹介する。

■各自で質問を洗い出す

 この記事の冒頭のように、漠然と「何かいいアイデアはありませんか?」と聞いても、なかなかいいアイデアは出てこない。もし、アイデアが出てきたとしても、最初に出てきたアイデアに引っ張られて、議論が偏ってしまう恐れがある。

 そこで、まず思考範囲を広げるような質問を洗い出すとよい。例えば、次のような質問だ。

《アイデアを広げる質問の例》

  • あなたは10年後、どのような仕事をしたいですか?
  • この会社は10年後、どうなってほしいですか?
  • 仕事の中で、どういうことに腹が立ちますか?
  • もしあなたが社長だったら、まず何をしますか?
  • もしあなたがお客様だったら、どうしてほしいと思いますか?
  • このテーマについて、思いつくキーワードは何ですか?

 このように、時間軸、範囲、立場、対象、解決策、組み合わせを変えるような質問を挙げていくと、アイデアを広げていくことができる。

 ある程度偏りがなくなってきたら、次はアイデアをより具体的なものにするための質問を挙げていく。例えば、次のようなものだ。

《アイデアを深堀りする質問》

  • 誰のためのアイデアですか?
  • 何の課題を解決しますか?
  • どうやってその課題を解決しますか?
  • なぜそれをやりたいと思ったのですか?
  • 競合や代替手段との違いは何ですか?

 このようにアイデアの詳細を詰めていく質問によって、より細かく、具体的なことに目が向けられるようになる。

 質問を洗い出す際は、議論の偏りを避けるため、まずは各自バラバラに質問を洗い出すとよい。目安の時間は10分程度でよいだろう。

 このような質問は、ファシリテーターが事前に準備しておき、アイデア出しの状況に応じて、臨機応変に質問を投げ掛けるというやり方もある。だが、これはなかなか難しく、ファシリテーションの訓練がかなり必要で、再現性も低い。質問の洗い出しからみんなでやることで、観点の偏りやファシリテーターのスキル依存を回避することができる。

■みんなで質問を共有し、投票する

 質問が出そろったら、参加者同士でその内容を共有する。皆でよい観点の質問に投票し、票が多い質問をピックアップする。また、個人的に気になった質問もピックアップしておくとよい。

■アイデアを広げる質問に答える

 次に、上記でピックアップした質問に答える形でアイデアを出す。

 まず、各自個人作業でアイデアを広げる質問に対して答えとなるアイデアをリストアップし、後で共有する。

 個人でのアイデア出し5分、共有5分を何ラウンドか繰り返す。アイデアが発散しきるまで繰り返すのが理想だが、時間制限に応じて回数は調整するとよいだろう。

 個人作業を織り交ぜ、皆が平等に意見を出せるようにするのがポイントだ。また、時間制限を細かく設けることで、話が長い人が延々と話し続けるのを防ぐという目的もある。

■アイデアをグルーピングして投票する

 アイデアがたくさん出た場合、全てのアイデアについて深堀りをする時間はないため、優先して検討するアイデアを絞り込む必要がある。

アイデアを絞り込む際は、まずは類似のアイデアをグルーピングし、グループごとに優先したいものを皆で投票するとよいだろう。

■アイデアを深堀りする質問に答える

 優先するアイデアが決まったら、最初に洗い出したアイデアを深堀りするための質問に順に答えていく。これはアイデアをさまざまな観点から検証していく作業だ。このような検証を経ることで、アイデアの解像度が高まり、本当にやるべきアイデアかどうかが明確になる。

 この時も、個人作業5分、参加者同士での共有5分のように、時間を区切って実施するとよい。

■まとめ

 アイデアは出なくても、アイデアを出すための観点となる質問を洗い出すのは比較的容易だ。そして、ゼロからアイデアを生み出すよりも、質問によってある程度観点を固定して考えた方が、アイデアが出やすくなる。また、質問に答えることでアイデアを詳細に検討することができ、人に伝わるぐらい解像度の高いアイデアに磨き上げることができる。

 もし冒頭のイラストのように、アイデア出しでフリーズしてしまうようなことがあるなら、今回紹介した方法を試してみてはどうだろうか。

【著者略歴】

伊勢川暁(いせがわあきら)ドリーム・アーツサービス&プロダクトデザイン本部 INSUITEグループマネージャー。コミュニケーション・デザインから企業変革を支えるクラウドサービス「INSUITE」の開発に従事。個人でも、人工知能(AI)で会議を短く創造的にする「minmeeting」のサービスを立ち上げ中。

あなたにおススメの記事

関連記事

スポーツ

ビジネス

地域

政治・国際

株式会社共同通信社