【コラム:おんせん! オンセン! 温泉!】川中温泉 かど半旅館

 「わぁ〜この温泉お肌すべすべ〜!」。温泉に入ってこんな感じの肌になれたらうれしいですよね。温泉に期待する効能を聞いたアンケートでも、「美肌」は一、二を争う人気ワードです。そんな願いをかなえてくれる「美人の湯」の最高峰「日本三美人の湯」をご存じでしょうか。それは和歌山県「龍神温泉」、島根県「湯の川温泉」、群馬県「川中温泉」の3温泉地。1920年に国鉄内の組織である鉄道院から発行された「温泉案内」で、この3温泉地が紹介されたのがきっかけといわれる、由緒正しい「美人の湯」です。ちなみに当時の「温泉案内」には、「肌の色を白くする」という効能がうたわれていたんだとか。今回はその中から、東日本で唯一名を連ねる群馬県の「川中温泉」をご紹介します。

群馬の山中にあるひなびた一軒宿=群馬県東吾妻町の川中温泉、2018年2月撮影

 「川中温泉」は群馬県西部に位置する東吾妻町の山中に湧く温泉で、都内からのアクセスは車で約2時間半の道のり。1泊2日の旅行にちょうど良い距離感です。「川中温泉」には温泉街というものはなく、大自然の中にぽつんと一軒旅館が存在するのみです。主要国道「八ッ場バイパス」を横に1本それ、5分ほど走ると到着する好立地ですが、周囲には人工的なものの一切ない「秘湯」と呼べる空間。そんな川中温泉の一軒宿「かど半旅館」は、「日本秘湯を守る会」の会員宿でもあります。

「美人の湯」の名にふさわしい泉質は「美容液」のよう

 「日本三美人の湯」の一角をなす「川中温泉」。その「美人湯」ポイントは、「泉質」「pH」「湯づかい」の三つにあります。

1、泉質

 川中温泉の泉質は「カルシウム―硫酸塩泉(石膏泉)」です。

 温泉成分が肌をベールのように包み込むことで水分をしっかり補給し、しっとり保湿。ベールの効果は保温も兼ねており、血の巡りが良くなることで、透き通るようなクリアな「美肌」を手に入れることができます。また、カルシウムが豊富な泉質は鎮静効果が高く、にきび、しっしんなどの肌荒れにも効能があります。

2、pH

 酸性からアルカリ性までを示すpHですが、川中温泉はpH8.6のアルカリ性。これは肌の余分な皮脂・汚れを取ってくてる石けんのようなクレンジング効果があります。そのため、つかるだけでつるんと一皮むけたようなツルツルすべすべ肌に仕上げてくれます。

3、湯づかい

 そんな素晴らしい源泉も加水や循環、消毒を行うと、その効果は薄れてしまうもの。「かど半旅館」では、加水・循環・消毒のない「かけ流し」という最高の「湯づかい」で、源泉の効能をダイレクトに受け取ることができます。また、源泉温度が34.7度と体温よりも低いため、時期によっては加温を行いますが、それも温めた配管に源泉を通すという鮮度を損なわない自然な方法を取っています。加温しても体温ぐらいの湯温のため、いくらでも入っていられる長湯向きな「ぬる湯」です。じっくりゆっくりお湯につかることで、源泉の効能をより得ることができるでしょう。

 無色透明の透き通るようなお湯は、かすかな甘い硫黄の香りが漂います。これは鮮度が良い証拠。つるつるすべすべな肌ざわりが心地よく、しばらくつかるとプルっと肌を包み込むような感覚は「美容液」に入っているようです。

 湯上がりは、その肌触りが乗り移ったかのような「すべすべぷるぷる」のハリのある肌を実感できることでしょう。

日帰り入浴不可。「混浴」が残る大浴場

 浴室は男女別の内湯と、混浴の内湯・露天風呂からなる大湯(時間帯で女性専用)の3カ所。大湯の露天風呂では、川のせせらぎと山の緑を含んだ爽やかな風を感じながらのぜいたくな湯浴みを堪能できます。

 特に女性の方は、「混浴」に対して少し抵抗を感じるかもしれませんが、ここでは日帰り入浴客は受け入れておらず、入浴できるのは全て宿泊のお客様。いつ入っても混みあうこともなく、純粋に温泉が好きで来られている方がマナーもしっかりわきまえていらっしゃいます。そして皆さん長湯なので、自然と温泉談議にも花が咲きます。

 夜の入浴では、神奈川からいらっしゃったという雰囲気の良いご夫婦と温泉談義に。ここは肌がすべすべになるし、本当に温泉が好きな人が多いから、混浴でも安心して入れるのよ、という奥様からの話がとても印象的でした。

群馬の郷土料理「おっきりこみ」。地元の食材で内側からの美も

 お待ちかねの夕食は地元の食材をふんだんに使ったメニュー。鯉の洗い、イワナの塩焼き、コンニャク、上州牛、野菜の蒸し焼きなど、一つ一つ丁寧に作られた料理に舌鼓です。家庭的な優しい味付けは、おなかにも優しく心までほっこりとします。群馬の郷土料理「おっきりこみ」は、手打ちの太麺を野菜と一緒に、味噌ベースのスープでじっくり煮込んだ料理で、山梨県の名物「ほうとう」にも似ています。

 旅館の夕食となると、豪華絢爛で食べきれないほどの量、ということも多くありますが、「かど半旅館」ではほどよい量の健康的かつ優しいメニュー。温泉で外側から美しくなるだけではなく、食事で体の内側からも美しさを手に入れられそうです。

家庭的で居心地の良い老舗旅館

 「日本三美人の湯」「日本秘湯を守る会」の肩書きを持つ名門の香り漂う老舗旅館ですが、初めて訪れてもどこか「懐かしさ」を感じる雰囲気があります。「美容液」のようなとろとろの温泉に、地元の食材中心の食事、温かく迎え入れてくれる宿のご主人とおかみさんのおもてなしも素晴らしく、「温泉」以外にもたくさんの魅力がぎゅっと詰め込まれているアットホームな旅館でした。

【川中温泉 かど半旅館】

住所:群馬県吾妻郡東吾妻町松谷2432、電話番号:0279―67―3314

URL http://www.kawanaka-kadohan.com

【泉質】

カルシウム-硫酸塩泉(低張性 アルカリ性 温泉)/泉温:34.7℃/pH:8.6/湧出状況:自然湧出/湧出量:毎分60リットル/加水:なし/加温:時期により有(冬季)/循環:なし/消毒:なし/完全かけ流し/シャワー・カランも源泉を使用

【筆者略歴】

小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。 交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は1800以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)。

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