ネット広告の“闇”を払え! カギとなるのはからくりへの理解促進

記者会見でモバイル広告をめぐる適正管理、効果計測の重要性を訴えるアップスフライヤー・ジャパンのカントリーマネージャー大坪直哉さん(写真左。2019年4月24日、東京都中央区で)。

 

テレビのワイドショーや改元特番の金太郎飴的な平成回顧に食傷気味の向きも多かろうが、平成と共に消えたモノの一つに、開票作業の短縮や経費節減を喧伝して一部の地方選挙で導入された「電子投票」がある。

総務省のまとめでは平成14年から28年までに10の自治体の首長・議員選挙で計25回の電子投票が行われた。

しかし、機器の故障や計算ミスなど当初から“本来ありえないトラブル”が続出。二重投票や投票記録の削除など散々な結果に終わった岐阜県可児市議選の電子投票を最高裁が「無効」とするなど、信用はガタ落ちした。

平成28年の青森県六戸町議補選を最後に、すべての導入自治体が実施条例を廃止・休止して、電子投票から“撤退”した。

従来の投票方法なら投票用紙を数えれば結果の正しさを確認できるが、タッチパネルで選択された候補者名を電磁的記録に刻む電子投票では、その結果(電子データ)の正しさを、投票用紙を数えるような容易さで確認することはできない。

結果を導く計算過程の不透明性、いわゆる“ブラックボックス度”は明らかに電子投票のほうが高い。結論への信頼がわずかでも崩れれば、民主政治の土台をなす投票制度としては到底維持できないだろう。

昨今の成長目覚ましい人工知能(AI)による医療分野でも、同じような“ブラックボックス問題”が横たわっているようだ。

米週刊誌ニューズウィークの「AI医療」特集(日本版2018年11月20日号)は、画像診断による皮膚がん判定ではAIがすでに医師を上回る正確性を示していると紹介する一方で、糖尿病治療へのAI活用では、最適な治療選択肢を提示するはずのアルゴリズム(計算手法)が不適切だった事例に触れ、AIが結論を下す“過程”の不透明性も指摘している。

AI医療の普及も結局は、AIの結論に対する人間の信頼、あるいは結論を左右するアルゴリズムの透明性・検証可能性がモノを言うのだろう。

検索事項に関連した商品広告が自動表示される「検索連動広告」や、サイト閲覧者のネット利用履歴を基に表示される「リターゲティング(リタゲ)広告」などさまざまな広告手法が生まれている「ネット広告」の世界も、電子投票やAI医療の世界と似ていなくもない。

ネット広告は「広告配信システム」(アドネットワーク)を介して無数のサイトに自動配信される。関心を示す割合が高い消費者を“狙い撃ち”できる広告手法で広告主に好まれる。市場は年々伸びている。

しかし、広告主にとって便利で効率的なこの広告配信システムが、ときに暴走し、広告主に痛手を負わせる“凶器”になるから注意が欠かせない。

知らないうちに、広告内容のイメージにそぐわない「不適切なサイト」に表示されてしまうことがある、という(2017年12月20日付東洋経済オンライン、杉本りうこ記者)。例えばアダルト系サイトやヘイトサイトなどに表示されてしまう。

また表示先のアプリが不正に水増しされてインストールされた場合などは広告効果に対して誤った認識を広告主にもたらすリスクもある。

これらのネット広告をめぐるトラブルは、虚偽内容を含むいわゆる「フェイク広告」の拡散も含め「ネット広告の闇」として、最近大手マスコミなどで取り上げられるようになった。

ネット広告の闇への対応としては、ネット広告の「受け手」である消費者に対して、消費者庁がフェイク広告の業者名を公表して注意喚起を行っている(NHKクローズアップ現代、2019年1月22日「追跡!“フェイク”ネット広告の闇」)。

一方、ネット広告の「出し手」である広告主は、広告主自身が把握、確認できる新聞、雑誌などの「旧来広告」と違い、無数の表示先があるネット広告の世界では、その効果も含め、自ら適正に把握、確認、管理することはそう簡単ではない。

このためネット広告を扱う広告代理店は、広告主に対して「ネット広告の闇」(=ブラックボックス)を取り払って、効果も含めて適正に広告を管理し説明する「説明能力」が求められる時代になりつつある。

不適切なサイトに広告が掲載されていないかチェックする「広告価値毀損測定」の企業や、ネット広告が実際どのくらいの効果があったか分かる(アプリのインストール数など)「ネット広告効果計測」サービスを提供する企業など、ブラックボックスに“光”を当て透明化する専門企業が現れている。

ネット広告のうちモバイル広告の効果計測サービスを提供している企業の一つ「アップスフライヤー・ジャパン」(東京)は、広告代理店自身が、ネット広告のブラックボックスの中身(アプリのインストール数など)を広告主に説明できる能力を培う研修プログラムを無料で提供するサービスも始めた。同社によると、大手代理店が関心を示している、という。

今後ますます伸びていくことが予想されるネット広告の闇を取り払い、不透明なブラックボックスを透明化していくには、広告の「受け手」である消費者、「出し手」である広告主、そして両者を媒介する広告代理店などの仲介業者が、ネット広告に関心を持ち、その“からくり”への理解を深めていくことが必要になってくるだろう。

 

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