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【コラム】インターフェースの進化

 神様とのインターフェース(二つのものの接点)がさえないなあ、と思うことがある。

 もちろん、インターフェースなどというものは、そもそもさえないのだ。

 人と人とのインターフェースは、あいさつや会話だろうが、ちょっとした善意を伝えたくて会釈するくらいのシンプルな情報伝達ですら、うまくいかずに「あれは嫌みで嘲笑したに違いない」などと解釈され、人の輪にあつれきをもたらす。

 もし、純度100%で何かを伝えたければ、取りあえずぶん殴っておけば悪意だけはきちんと伝達できる気がする。しかし、それですら「今のは愛のむちだった」などと誤解されてしまうことはあるだろう。

 でもなあ。

 全知の神様がもしいるのならば、世界にもうちょっと気の利いたインターフェースを用意してくれたらよかったに、と思うのだ。

 だって、どんな学校に行くかとか。どこの会社に勤めるのかとか。誰と結婚するのかとか。かなり大事な決断だ。入試に落ちるかもしれないし、ブラック企業に当たるかもしれないし、配偶者に逃げられるかもしれない。

 そんなときに、セーブポイント(コンピューターゲームで、達成した成果を記録するポイント。失敗すればセーブポイントまで戻ってやり直せる)があれば…。

 リストア(元の状態に戻すこと)して人生が復元できる。何回もとは言わない。運用が大変そうだから。「時をかける少女」みたいに30回も跳べちゃうと、それはそれでしんどそうだ。でもせめて3回くらい。大学入試と就職と結婚と出産と離婚と…、3回超えてるな。

 コンピューター利用の歴史は、インターフェース改善の歴史だったと言ってもよい。

 コンピューターの内部ロジックと、人間の思考はまったく違う。

 部下に仕事を命じるのと、コンピューターに仕事を命じるのは、「命じる」ことでは共通していても、命じ方は似ても似つかない。最初はコンピューターに余裕がなかったので、人間の側がコンピューターに合わせるしかなかった。命じるたびにいちいち配線を変更したり、パンチカードに穴をうがったりしてきた。一度開けてしまった穴の修正はきかないから、プログラミングも必死である。パンチカードはけっこう高かったのだ。

 少しコンピューターの側に余力が生じると、キーボードから文字をたたいて指示命令ができるようになった。今で言うCUI(Character User Interface)である。何せ、配線やパンチカードと違って、打ち間違いを気楽に修正できる。これでぐっとコンピューターとの対話は楽になった。

 だが、人間の欲望は限りがないもので、CUIでも面倒だという人が後を絶たなかった。キーボードから「remove」だの「kill」だのコマンドするのがいらいらするわけである。そこで出てきたのが、画面上のアイコンをマウスでクリックするタイプのインターフェースで、これはCUIに対してGUI(Graphical User Interface)と呼ばれる。

 その次のインターフェースが大きくブレイクするためには、iPhoneを待たなければならなかった。スマートフォンやタブレットで当たり前のように使われているタッチパネル方式である。指で操作するタイプのインターフェースは昔からあったが、登場初期は表示画面と操作パネルは別だった。手元の操作パネルを指でなぞったり、スタイラス(タッチペン)でつついたりすると、それとは別の表示画面に何らかのアクションがあるのだ。

 スマホはとても小さい表面積に、PC並みの情報表示がしたいと欲張った製品であるため、タッチパネル形式が採用されたのは苦肉の策である側面もあるのだが、このインターフェースはとてもうまく機能したと思う。情報を指でいじれるのだ。

 パンチカードも、キーボードも、マウスでさえも、直接情報にアクセスすることはできなかった。でも、タッチパネルであれば画面に映っている情報に、直接指で触れることができる。

 もちろん錯覚ではある。本当にデジタルデータに指でアクセスができるわけではない。しかし、あまねくインターフェースによる接続が錯覚であることを考えれば(言葉でも、アイコンタクトでも、拳による殴り合いでも。分かり合った気になっているだけだ)、このインターフェースはすごくよくできている。神様が用意してくれた言葉と同じくらいには。

 おそらく、次のインターフェースのブレイクスルーは、脳とコンピューターとの直結である。思考によって何かの作用を引き起こすインターフェースは、萌芽的なものがすでに実験段階にあるが、私のように雑念の多い人間も安心して使えるような製品に育ってほしい。

【筆者略歴】

岡嶋裕史(おかじま・ゆうし) 中央大学国際情報学部開設準備室副室長。富士総合研究所、関東学院大学情報科学センター所長を経て現職。著書多数。近著に「ビッグデータの罠」(新潮社)など。

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