若者の“夢”支えて15年、上月財団、クリエーター育成

 コナミホールディングスの配当金で運営されている上月財団(上月景正理事長)の「クリエーター育成事業」が今夏、15年目を迎えた。漫画家やデジタルアーティストなどを目指す若者に助成金を交付する事業で、これまでに延べ523人の下積み時代を支えてきた。夢を実現し漫画家などプロデビューした者は16人に上る。

 家庭の経済事情などで才能が埋もれがちな15~25歳の若きクリエーターの発掘、育成を狙いに2004年から開始。毎年およそ30人に1人当たり年間60万円を交付している。

 今年は219人の助成申請があり、第1、第2次の2回の選考を行い最終的に30人の助成を決めた。

 7月25日に東京ミッドタウンで開いた第2次選考会には1次選考を通過した48人が参加。選考は制限時間内に与えられたテーマの絵を描く実技と面接で実施。実技の会場では、5人の選考委員が見つめる中、“クリエーターの卵たち”は一心不乱に制作に取り組んでいた。

 会場には、10年度の助成対象者で「神さまの言うとおり」が代表作の漫画家・藤村緋二(あけじ)さんも姿を見せ、制作作業を見学した。選考委員長を務める東尾公彦・上月財団専務理事は「始めたころはこんなに多くのプロがこんなに早く生まれるとは予想もしていなかった。プロの漫画家になったかつての助成対象者の下でアシスタントを務める若者が最近助成を申請してきた。15年経過し良い循環が生まれている」と手応えを語る。

第2次選考会で実技審査の制作に取り組む第1次選考通過者=7月25日、東京都港区

“後輩たち”にエール

 事業開始から選考委員を務め面接で数多くの若者を見てきた松谷孝征・手塚プロダクション社長は「漫画に対する世間の評価が変わってきた。作品を通して社会に訴えたいことを心の支えとして大切にし、一生懸命勉強してこれから良い作品を生み出してほしい」と話す。

 昨年に続き今年も助成対象者に選ばれた多摩美術大4年の西尾侑夏さんは、世界で活躍するアーティストを目指し、現在油絵とアクリル絵を勉強している。助成金は、来年スイスのバーゼルで開かれる世界最大規模のアートフェア「アート・バーゼル」に行く費用に充てるという。

 今年で3年連続、3回目の助成金を受け取ることが決まった東京芸術大4年の門脇康平さんは「アニメーション映画の新しい表現」を模索する映画監督の卵だ。すでに自主制作映画2作品を手掛けている。今回の助成金で3作目の自主制作映画を創る。

 門脇さんは「アニメはまだまだ表現可能な世界が広がっている。今生きているこの世界は思ったより良い場所だということをファンタジーの形式を借りて伝えたい」と意気込みを語った。

 漫画家となった藤村さんは「上月財団の助成には感謝しかない。実技審査の会場を見て必死だった昔の自分を思い出した。プロはとても厳しい世界だが、強い意志で夢を実現してほしい」と述べ、プロを目指す“後輩たち”にエールを送った。

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