松本竣介のアトリエを再現へ 大川美術館、クラウドで資金募る

 1948年、病のため36歳の若さでこの世を去った、画家の松本竣介(まつもと・しゅんすけ)の作品展示に力を入れている大川美術館(群馬県桐生市)が、「竣介のアトリエ再見プロジェクト」として三つの企画展を今秋から来年6月まで開催する。このプロジェクトを実現するために、大川美術館は6月1日から、インターネット上で小口の資金を募る「クラウドファンディング」を始めている。トップ画像の絵画は、「街」1938年(公益財団法人大川美術館蔵)

 松本竣介には、人物や都市の風景を描いた作品が多い。風景画は、東京や横浜の景色を描いていながら、重厚な色遣いと独特の描写方法から、まるで異国や異世界に迷い込んだような印象を見る者に与える。

立てる像 1941年(神奈川県立近代美術館蔵)

 生前に二科展での受賞歴もあったが、評価が進んだのはむしろ没後のことだった。静謐な叙情をたたえた作品の魅力に加え、戦時下の統制の中でも時局におもねらずに、総合雑誌『雑記帳』の刊行と執筆を続け、芸術家、文学者、学者の知的交流を図り続けた誠実な知的営為も、人々の共感を呼んだのである。作品の多くは現在では国公立の美術館に収蔵されているが、かねてより松本竣介の作品展示に力を入れている美術館の一つが、群馬県桐生市の大川美術館だ。美術館の創設者、故大川栄二氏(1924~2008年)が40年以上にわたって収集に努めてきた。美術館は、松本竣介が今年、没後70年となることから、「竣介のアトリエ再見プロジェクト」として三つの企画展を10月13日~2019年6月16日に開催する。

アトリエでイーゼルの前に座る松本竣介

 最大の見どころは、企画名にもあるとおり、松本竣介のアトリエを再現する15畳のスペースで、イーゼルやパレット、椅子、500冊におよぶ蔵書、書棚、古道具など約60点の品々を、当時の様子が分かるように配置して展示する。同時代の東西の思潮に鋭敏だった松本の蔵書は当時の知的環境の良質な見取り図となっており、多くの人々が集ったアトリエは芸術家、知識人の交流のありさまを彷彿とさせる。軍靴の音を聞きながらも、芸術家、文学者、学者が領域横断的に交流し、日本独自の文化を醸成しようとしていた1930年代の輝きの痕跡がここに垣間見える。

りんご 1944年(小野画廊蔵)

 だが、このプロジェクトは大川美術館にとっても厳しいチャレンジとなる。美術館まで品物を搬送し、長期間にわたって公開管理するためには相当な費用が必要となる。入館料収入だけで賄うのは困難な状況だという。

 そこで大川美術館が選んだ方法が、少額の資金を多くの人から集める「クラウドファンディング」という手法。支援は5000円、1万円、3万円、10万円以上のコースがあり、それぞれに特別招待券やホームページなどへの名前掲載(希望者のみ)、記念品などの特典がある。目標金額は500万円で、期限は6月1日から7月31日午前10時まで。

 大川美術館の田中淳館長は「この作家の場合、よくぞといいたくなるほど、多くの遺品が残されている。没後70年の間に失われたものも考慮しながら、当時のアトリエを注意深く再現するつもりだ。画家の生活と息づかいをまずじっくりと感じてから、作品を味わっていただきたい」と話し、クラウドファンディングへの協力を呼び掛けている。

詳細は、http://www.shinkin.co.jp/kiryu/pdf/ookawab.pdf

蔵書の前の松本竣介 アトリエにて 1940年

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