神奈川箱根町の箱根温泉「大和館」、2020年8月撮影

【コラム:おんせん! オンセン! 温泉!】箱根湯本温泉 大和館

 真夏の日差しがひと段落し、秋の気配を少しずつ感じるようになりました。行楽の季節ですね。コロナ禍の状況の中、無理に遠出せず、近場で手軽に楽しみたいと考えている方も多いのではないでしょうか。

 箱根湯本温泉、宮ノ下温泉、強羅温泉などからなる箱根温泉郷は、関東在住民にとって、近場の観光地の代表格。日本屈指ともいえる温泉街には、そば、すし、ラーメン、アイス、和菓子などの飲食店が軒を連ね、周囲には芦ノ湖や、大涌谷などの景勝スポットも充実しています。宿泊施設も多種多様で、老舗の高級旅館、最新の設備を整えた巨大ホテル、家族経営の素朴な旅館など、旅のスタイルに合わせて選ぶことができます。今回は、気楽なひとり温泉旅にふさわしい箱根の素朴な老舗旅館「大和館」をご紹介します。

風情ある箱根湯本温泉街

 神奈川県箱根町にある箱根温泉郷は、都心から車で90分ほど。鉄道利用でも、新宿駅から小田急小田原線の特急ロマンスカー利用で90分と、抜群のアクセスの良さを誇ります。箱根温泉郷の玄関口に当たる箱根湯本温泉は、日本の伝統的な温泉地らしい風情を保つ温泉街です。交通の便の良さもあり、この状況の中でも、以前と変わらぬにぎわいを見せています。

 多くの観光客で活気にあふれる温泉街も、メインストリートから1本でも道をそれると、人もまばらで静か。昔ながらの石畳が敷かれ、温泉情緒も高まります。

 そんな路地裏空間に、今回お邪魔した「大和館」は、ひっそりとたたずんでいます。創業は江戸時代で、箱根でも屈指の歴史を誇り、現在の建物は、明治・大正時代建築の文化財級の宿です。素朴な外観ではありますが、長年の時間が蓄積しないと出せない深い味わいがあります。

ロビーには大きなクマのぬいぐるみが座るほほ笑ましい空間

 館内は、素朴でどこか温かい雰囲気。古いですが、細かいところまで手入れが行き届き、アンティークのような輝きを感じます。受付では、笑顔が素敵で気さくなおかみさんが、優しく対応してくれ、田舎の親戚の家に遊びに行ったかのような、くつろいだ気持ちにさせてくれます。

古いが細かいところまで手入れされた清潔な部屋

 大和館は、日帰り入浴での利用も可能ですが、今回は宿泊で利用しました。通されたお部屋は、茶色の壁に、味のある木の机などが調和する、レトロで渋い空間。箱根の路地裏の宿だけあって、部屋にいると、とても静かです。昔ながらのどことなく懐かしい香りが漂い、ゆったりとした時間を過ごすことができます。

明るいタイルがかわいらしい「大浴場」

 宿にはお風呂が3カ所あり、それぞれ貸し切りで利用できますので、「密」を避けることができます。

一番大きい「大浴場」は、大人が3人入ればいっぱいの湯船に、昭和30年代モノのレトロなタイルが張りめぐらされた、かわいらしく明るい空間。そこには、無色透明の新鮮な源泉が、「掛け流し」でとうとうと注がれています。泉質は、アルカリ性単純温泉。滑らかな肌触りで、癖のないまろやかなお湯です。源泉温度は37度ほどとぬるめで、冬季は加温をしていますが、今の時期はそのまま湯船に投入しているので、「ぬる湯好き」にはたまらない、優しい湯浴みを堪能できます。

戦前のタイルがそのまま残る「御家族風呂」

 その他のお風呂は、「家族風呂」と「婦人風呂」の二つ。どちらも大人1人サイズの湯船と、こぢんまりとしたつくりです。そこには、戦前のモノというアンティークなタイルがそのまま残り、圧倒的な風情を醸し出す、ノスタルジック空間です。

 日帰り入浴で利用する場合、空いているお風呂を1時間600円で貸し切りにでき、宿泊すれば、すべてのお風呂が堪能できます(宿泊は5500円~)。

カツ+角煮+温泉玉子のコラボカレー「心スペシャル」

 大和館の宿泊は、現在「素泊まり」のみ。美食を求めて、箱根の温泉街を散策してみるのもおすすめです。

 今回訪れたのは、「箱根かれー 心(こころ)」。箱根は、そばなどの和食が有名ですが、洋食も充実しており、このお店は、箱根初のカレー専門店とのことです。注文したのは、「心スペシャル」。冷めないよう鉄板に入ったカレーと、大きなカツが乗ったご飯の器が、視覚的にも内容的にもボリューミー。サクサクのカツに、トロトロの角煮、甘い素揚げ野菜と、クリーミーな温泉玉子のハーモニーが食欲をそそり、それをまとめるカレーがとてもおいしく、汗をかきながら頬張りました。

大和館近くの景色

 家族や恋人、友人同士、ひとり旅など旅のスタイルに合わせて、さまざまな過ごし方を受け入れてくれる箱根。にぎやかな温泉街も、一歩路地裏に入れば、にぎやかさから一線を画す、別世界のような空間が広がっています。大きな旅館の中で、みんなでワイワイお風呂に入り、豪華な食事を堪能する旅行ももちろんいいものですが、素朴な宿に素泊まりし、ゆったり温泉と、温泉街のグルメを楽しむ気楽なひとり旅もいいものですよ。

【箱根湯本温泉 大和館】

住所 神奈川県足柄下郡箱根町湯本655

電話番号 0460-85-5746

URL https://www.hakone-ryokan.or.jp/search/00491/

【泉質】

アルカリ性単純温泉(低張性 アルカリ性 温泉)/泉温37.4度/pH:8.9/湧出状況:不明/湧出量:不明/加水:なし/加温:なし、あり(気温の低い時のみ)/循環:なし/消毒:なし ★掛け流し

【筆者略歴】

小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。 交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は2000以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)。

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