長野県山ノ内町 渋温泉、2018年7月撮影

【コラム:おんせん! オンセン! 温泉!】渋温泉 湯本旅館

長野県山ノ内町にある「湯田中渋温泉郷」。横湯川、夜間瀬(よませ)川流域に点在する湯田中温泉、渋温泉、安代温泉、角間温泉など九つの温泉地で形成され、旅館・ホテルは100軒ほどあります。共同浴場は40軒以上あり、その数は別府温泉郷に次いで全国2位という東日本随一の温泉郷です。

そんな湯田中渋温泉郷の中で、屈指の人気を誇るのが「渋温泉」。温泉街は、石畳の道に風情ある木造旅館が軒を連ね、ノスタルジックな街並みです。現在35軒の旅館と9軒の共同浴場がありますが、その全てが「源泉掛け流し」というこだわりも魅力です。今回はそんな渋温泉の発祥の宿ともいわれ、宿独自の「自家源泉」を有する「湯本旅館」を紹介します。

温泉街のメインストリートにある「湯本旅館」

長野電鉄・湯田中駅から長電バスで約5分で渋温泉に到着し、そのまま温泉街を歩いてすぐの中心地に「湯本旅館」はあります。

共同浴場の「九番湯 渋大湯」の真横に建つ老舗旅館は、木造3階建のレトロな外観。その建物は築120年以上という重要文化財級の貴重なもので、和の伝統的な要素と明治・大正期の洋の要素が融合する重厚な造りです。その雰囲気は圧倒的で、そこにいるだけで時間が止まり、大正時代にタイムスリップしてしまいそうです。

自家源泉を堪能できる男女別内湯

湯本旅館には男女別内湯と貸切で利用する露天風呂があり、それぞれ源泉が異なります。自家源泉を堪能できるのは男女別の内湯で、木のぬくもりを感じられる浴室は共同浴場のような風情があります。湯船は6、7人が入れる大きさで、無色透明の源泉が惜しげもなく掛け流されています。その名も「喜四郎の湯」。もちろん加水・加温・循環・消毒なしです。

泉質は、ナトリウム・カルシウム―塩化物・硫酸塩温泉。浴室全体が新鮮な温泉独特の甘い香りに包まれ、湯口は爽やかな硫黄が香ります。ツルツルスベスベの感触の中にキシキシ感も同居する肌触りが個性的で、しばらく漬かっているとヌルッと肌にまとわりつくような浴感が心地よく、なめると甘味と薄塩ダシ味を感じるミネラルたっぷりのお湯です。カエルの湯口には、白い成分の析出物がこびりつき、眺めるだけで心がほっこり癒されます。

薄濁りの露天風呂を独泉で堪能

貸し切りの露天風呂は宿泊者限定で、予約制ではなく空いていればその都度、鍵を借りて利用でき、1回の入浴時間は30分です。箱庭の中にいるようなこもり感のあるつくりは静かに入浴するにはピッタリな空間。貸し切りのため、他のお客さんのことは気にせず、ゆっくりと露天風呂を堪能することができます。

露天風呂の源泉は内湯とは異なり、渋温泉が管理する共同源泉を使用し、こちらも加水・加温・循環・消毒なしの「完全掛け流し」です。泉質は、ナトリウム・カルシウム―硫酸塩・塩化物温泉。内湯とは異なり、薄く濁ったお湯は、鉄と土を混ぜたような香りにギシギシする肌触りが特徴で、なめるとしっかり鉄の味を感じます。

湯上りはお肌プルプルの「美肌の湯」

渋温泉の源泉はどれも50度以上と温度が高いこともあり、浴槽の湯温も基本的には熱めです。そのためよく温まり、塩化物と硫酸塩という成分のコーティング効果で、ぽかぽかがずっと持続します。保湿もしてくれるため、湯上りはお肌プルプルで「美肌効果」を実感できます。湯上がりには、化粧水を塗った直後のようなしっとり肌になれるのは、男の私でもうれしいものです。

温泉街のグルメを味わう

せっかく渋温泉に宿泊するなら、温泉街散策もおすすめです。石畳の美しい温泉街には、飲食店も充実しています。

 

まず入ったのが、「海鮮和食 金新」。海なし県の長野県ですが、このお店はもともと旅館の仕出し専門の鮮魚店だったため、新鮮で良質な魚介類を提供します。注文したのは「海鮮丼」で、エビ、ホタテ、マグロ、イクラ、サーモン、イカ、玉子などの食材に舌鼓。絶妙な酢飯が刺身のうま味を引き立ててくれ、大満足でした。

「温泉とラーメンはセットだ!」という方には、「ラーメン徳味」がおすすめ。ここでは「醤油チャーシューメン」に「綿の湯ギョーザ」と「野沢菜」をいただきました。東京のラーメン店で修行を積んだというご主人の作るラーメンと餃子で、味はいうことありません。温泉でかいた汗で失われたミネラルをしっかり補給し、おなかも心も満たされました。

ちなみに、渋温泉には九つの地元の方向けの共同浴場がありますが、温泉街の旅館に宿泊すれば全て無料で入ることができます。1日で9カ所の温泉に入るのは、なかなか根気と体力が必要ですが、共同浴場めぐりの「スタンプラリー」も実施されているので、ぜひ挑戦してみてくださいね。

創業は600年以上前で、今のご主人で12代目という「湯本旅館」。大正ロマン薫る雰囲気は、建物だけでなく、気さくで明るい女将(おかみ)さんのおもてなしがあってこそのものです。

都会の日常とは明らかに異なるゆったりと流れる時間は、ノスタルジックを感じる「非日常空間」。この世界に浸るのがぜいたくな時間の過ごし方なんだなと、癒やされながら感じました。今後ものこのままの風情とおもてなしを残していって欲しい。そんなすてきな温泉宿です。

 

【温泉 源泉の宿 湯本旅館】

住所 長野県下高井郡山ノ内町大字平穏2218

電話番号:0269–33–2181

URL  http://www.sibu-yumoto.jp/index.htm

【泉質】

〈内湯〉ナトリウム・カルシウムー塩化物・硫酸塩温泉(低張性 中性 高温泉)/泉温51.4度/pH:7.1/湧出状況:混合泉/湧出量:不明/加水:なし/加温:なし/循環:なし/消毒:なし/自家源泉完全掛け流し

〈貸切露天風呂〉ナトリウム・カルシウムー硫酸塩・塩化物温泉(低張性 弱酸性 高温泉)/泉温65.0度/pH:4.6/湧出状況:混合泉/湧出量:不明/加水:なし/加温:なし/循環:なし/消毒:なし/渋温泉共同源泉完全掛け流し

【筆者略歴】

小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。 交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は1900以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)。

あなたにおススメの記事

関連記事

スポーツ

ビジネス

地域

政治・国際

株式会社共同通信社