長崎県雲仙市 雲仙温泉、2019年5月撮影

【コラム:おんせん! オンセン! 温泉!】雲仙温泉 雲仙よか湯

 温泉好きの方は数多いですが、ひと口に温泉といっても、求めるものはバラバラです。お風呂の種類や充実したアメニティーを重視する「施設充実系温泉」が好きな人や、ロケーションを重視する「露天風呂系温泉」を求める人など、その好みはさまざまだと思います。そんなこだわりの中には「お湯そのもの」という人も一定数います。設備や景色よりも、温泉が掛け流しかどうか、湯の特徴・個性が基準という人です。ちなみに私もその一人なのですが、今回はそんな「お湯そのもの」を重視する方必見の、個性的な湯を楽しめる温泉を紹介します。

もうもうと湯けむりあふれる豪快な雲仙地獄

 その個性的な温泉があるのは、長崎県の島原半島に位置する「雲仙温泉」。長崎市内から車で1時間ほどのアクセスです。

 開湯は701年と、1300年以上の長い歴史を持ち、明治時代から欧米人の保養地として繁栄した歴史があるため、洋風な旅館・ホテルが多く、レトロな異国情緒が漂います。また、標高700メートルの高地にあり、温泉地自体が雲仙天草国立公園に指定されているため、大自然の絶景も体感することができます。

雲仙温泉の共同浴場的存在の「雲仙よか湯」

 そんな風光明媚(めいび)な雲仙温泉の一角に、今回の目的地「雲仙よか湯」はあります。コンドミニアムを併設した宿泊施設ですが、どちらかというと「共同浴場」的な存在です。建物は飾りっ気のない至ってシンプルな造りで、「昭和」の味を残した風情ある施設です。

 大浴場は男女別で、それぞれ内湯と露天風呂を完備。内湯は10人ほどが入れそうな湯船が一つのシンプルな造りになっています。白を基調としたタイルと大きな窓の明るい浴室は、素朴でひなびた雰囲気を醸し出しています。そこに乳白色の源泉がこんこんと注がれ、脱衣所から浴室の扉を開けた瞬間から、濃縮した硫黄の香りが漂い、「お湯そのもの」重視の温泉好きも納得です。

 露天は小さな湯船が二つで、どちらも2、3人入ればいっぱいの浴槽です。こちらは景色が素晴らしく、雲仙の濃い森林を眺めながらの湯浴みは、無条件に気持ちいいものです。山の緑の香りを含んだ風が心地よく、硫黄の香りと相まったアロマテラピーが至福のひとときです。

硫黄・鉄・酸・アブラの四重奏

 泉質は酸性・含鉄−カルシウム−硫酸塩温泉。泉質名には出てきませんが、しっかりと焦げた硫黄の香りの中にアブラ・鉄の香りが共存し、なめてみると硫黄とアブラを混ぜて焦がしたような味が広がり、後味はキリッと鉄酸っぱいという強烈な個性のお湯です。でもこれが温泉マニアにはたまらないのです。ツルツル感もありますが、かなりギシギシで引っかかる肌触りで、しばらく漬かっていると、温泉成分が体をぷるっと包みこみ、抱かれているような浴感が夢心地です。

この日のお湯は乳白色でしたが、日によってエメラルドグリーンや灰色になるという七変化の温泉。もちろん純度100%の掛け流しです。

温泉街には「長崎ちゃんぽん」の名店も

 「雲仙よか湯」は素泊まりのみのため、夕食は温泉街へ。長崎県の名物といえば、やはり「長崎ちゃんぽん」。雲仙温泉街は数多くの飲食店でにぎわい、「長崎ちゃんぽん」の名店もあります。今回はその中の一つ「たら福」へ。濃厚な豚骨と鶏がらのスープに絡む太麺が相性抜群。豚肉やかまぼこ、キャベツ、モヤシなど具材も豊富でおなかも心もいっぱいです。

 その昔、長崎市内の中国人留学生に、安くて栄養価の高い物を食べてもらいたいと、いろいろな具材を「ちゃんぽん」して考案されたという「長崎ちゃんぽん」。栄養価が高いだけでなく、スープを全部飲み干したくなるほど絶品な名物料理です。

日本の名湯・雲仙温泉の中でも際立つ個性の「雲仙よか湯」

 1300年という歴史を誇り、その長い時間がしっかりと温泉街に刻み込まれている雲仙温泉。明治時代からは海外の要人をも癒やし、現在でもホンモノの風格が漂います。名物の「長崎ちゃんぽん」も一級品ですが、温泉も素晴らしく、ほとんどの旅館やホテルで「源泉掛け流し」のお風呂を堪能することができます。その中でも源泉の個性でいえば「雲仙よか湯」は際立っています。硫黄・鉄・酸・アブラと、一言でいえば「クセ」が強いのですが、それが印象に残り、また味わいたくなるのです。

【雲仙温泉 雲仙よか湯】

住所 長崎県雲仙市小浜町雲仙380 電話番号:0957–73–3482 URL  http://www.unzen-yokayu.co.jp

【泉質】

酸性・含鉄−カルシウム−硫酸塩温泉(低張性 酸性 高温泉)/泉温52.4度/pH:2.3/湧出状況:掘削自噴/湧出量:毎分86.8リットル/加水:なし/加温:なし(冬季あり)/循環:なし/消毒:なし/自家源泉掛け流し

【筆者略歴】

小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。 交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床での車中、ヒグマに衝突し頚椎骨折)。現在、総入湯数は1900以上。好きな温泉は草津温泉、古遠部温泉(青森県)。

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