【コラム:おんせん! オンセン! 温泉!】弁天鉱泉

 東京ディズニーリゾートに代表されるように、身近ながらリゾート的な観光地の多い千葉県。アクアラインを車で走れば、温暖で南国情緒が漂う館山へも90分ほどで行けます。「温泉のイメージ」はほとんどない千葉県ですが、意外にも、都道府県別温泉地数でトップ10に入るほど、温泉が多く存在します。その数は、別府温泉を擁し「おんせん県」を掲げる大分県や、関東有数の温泉どころ栃木県よりも多いというから驚きです。

 草津温泉や熱海温泉のような温泉街を形成する温泉地は少ないですが、静かで落ち着いた、秘湯的な一軒宿が県内各地に点在しています。

 今回はそんな「隠れ家」的な一軒宿「弁天鉱泉」をご紹介します。

南房総の高台にある弁天鉱泉

 千葉県南西の東京湾沿いに位置する南房総市。南国のリゾートを思わせる温暖な気候が特長の地域です。そんな穏やかな土地の、海に面した高台に「弁天鉱泉」があります。

 緑豊かな国道沿いに突然現れる弁天鉱泉の建物は、初めてだと通り過ぎてしまうほど景色に溶け込んでいます。都内からはアクアラインを経由して、車で約90分の道のりです。こんな近くで南国のリゾート気分が味わえます。

 純和風の館内は、全部で11の客室がありますが、宿泊は1日4組限定となっており、通される客室の両隣は必ず空室にするといううれしい配慮がされています。深夜まで続く隣の部屋の宴会で、せっかくの温泉旅行が台無し…そんな残念なことはここではありません。家族で、夫婦で、恋人と、友達同士で、それぞれの時間をゆったりと過ごすことができる、まさに「隠れ家」的な空間です。

にごり湯の硫黄泉は、源泉かけ流し

 お風呂は男女別の内湯と、貸切の露天風呂の2カ所(その他露天風呂付客室も有り)。温泉利用の内湯は、千葉県内でも大変珍しい「にごり湯」です。その色は時間の経過とともに、無色透明→エメラルドグリーン→乳白色と、日に何度も色が変わる不思議なお湯で、科学的な調査でも理由が分からないため、「神秘のにごり湯」ともいわれているそうです。

 泉質は、含硫黄―カルシウム・マグネシウム・ナトリウム―炭酸水素塩・硫酸塩泉。多くのミネラル成分が、バランスよく含まれています。優しくアロマのように香る硫黄が心地よく、ツルツルすべすべでしっとりとした肌触りが極上の入り心地です。しばらくお湯につかると肌に吸い付くような感覚は、正真正銘の「美肌の湯」です。ここではそんな名湯を「源泉かけ流し(加温循環併用)」で堪能することができます。

 硫黄パワーで毛細血管まで血行が促進され、炭酸水素塩がお肌を乳化させ、余分な皮脂を落とし、最後に硫酸塩が天然の化粧水の役割をしてくれます。いろんな成分が、それぞれの役割を果たし、美肌へと導いてくれます。湯上り後はお肌もっちりツヤツヤ!  そんなマルチビタミンのような温泉です。

露天風呂は1カ所のため、時間制の貸切で利用します。そのため他のお客さんに邪魔されない、自分たちだけの時間を過ごすことができます。露天風呂は「びわエキス」を溶け込ませた井戸水を利用。温泉ではありませんが、水道水とは明らかに異なる優しい湯ざわりを感じることができます。

 特筆すべきは湯船からの景色。普通の露天風呂ならあるはずの柵がなく、視界を遮るものない眼前には、高台から見下ろす東京湾の絶景が広がります。

 一軒宿のため、周囲に民家や他の旅館はなく、誰にも見られないため、全裸で仁王立ちしたって全然大丈夫。緑の香りを含んだ南房総の潮風が心地よく、抜群の開放感を全身で感じることができます。時間帯が合えば、東京湾に沈む夕日を拝むこともできるという関東屈指の絶景露天風呂です。

 弁天鉱泉はお風呂だけでなく、もちろん食事も魅力的です。地元の南房総で揚がった新鮮な魚介類をふんだんに使ったお造りは、見た目も味もびっくりのおいしさです。

 メニューは季節や、その日の仕入れ具合によって変わりますが、「旬」な地のものをおなかいっぱい堪能できるのは、温泉旅行の醍醐味の一つ。そして地物の日本酒を頂きながらの食事は、幸せ以外の何物でもありません。

「伊勢エビ」まるごと活き造りがすごい

 そんな新鮮な魚介類の中でも、メインは「伊勢エビ」のまだ生きている活き造り。まるごと1匹贅沢に使用し、触ろうとすると伊勢エビが襲いかかってくるほどの活きの良さ。味は言うまでもありません。

 頭の部分は夕食の最後にみそ汁のダシや具として再利用してくれ、頭から足の先まで伊勢エビを堪能でき大満足です。実は「伊勢エビ」の一大産地でもある千葉県。最初から最後まで新鮮な「伊勢エビ」尽くしの夕食に舌鼓です。

 「秘湯」を求めて何時間もかけて温泉へ。そんな旅もいいですが、都心から90分もあれば、手軽にこの「秘湯」を堪能できます。1日4組限定の一軒宿は、静かに過ごすには最適の空間。都会の喧騒に疲れたら、この「隠れ家」で癒されてください。

【弁天鉱泉】

住所:千葉県南房総市小浦487、電話番号:0470-57-2528

http://www.bentenkousen.com

【泉質】

含硫黄−カルシウム・マグネシウム・ナトリウム−炭酸水素塩・硫酸塩泉(低張性 中性 冷鉱泉)

泉温:21.4℃/pH:7.2/湧出状況:掘削自噴/湧出量:1.4ℓ/分/加水:なし/加温:有り/循環:有り/消毒:なし/かけ流し・循環併用

【筆者略歴】

小松 歩(こまつ あゆむ) 東京生まれ。温泉ソムリエ(マスター★)、温泉入浴指導員、温泉観光実践士。 交通事故の後遺症のリハビリで湯治を体験し、温泉に目覚める(知床にて車でヒグマに衝突し、その衝撃で頚椎骨折)。現在、総入湯数は1700以上。好きな温泉は草津温泉(群馬県)、古遠部温泉(青森県)。

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