【コラム】京都の秋を彩る文化点描あれこれ

 平成最後の秋、京都を訪れた。紅葉には早かったが、「時代祭り」を見る機会に恵まれ、古都の風情を満喫した。天皇即位の礼に使う高御座(たかみくら、玉座)は既に京を離れ、代替わりが急ピッチで進む。世の中がどう変化しようが京都の文化活動は活発だ。

アフリカ西部出身のサコ氏、京都精華大学長に就任

 今春、京都精華大学(京都市左京区)の学長に西アフリカのマリ出身のウスビ・サコ氏(52)が就任した。同大学は日本で最初にマンガ学部を設けた独自性で知られるが、さらに多様性が加わった感じだ。エネルギッシュな風貌に身長182センチの偉丈夫。関西弁を交え流れるような日本語でユーモアに富む。

 サコ氏は直接、日本に来たわけでなくまず中国へ渡った。マリの首都バマコの高校を卒業後、中国の支援による奨学金制度を利用して南京の大学に留学、5年間建築学を学んだ。卒業したものの当時、天安門事件の影響などもあって自由に研究できる雰囲気でなく、日本行きを決断した。かねて日本人の研究仲間や友人と交流していたこともあって「京都大学の大学院にノリで入った」とあっけらかんと話す。同大学院で博士号を取得した。

京都精華大学のウスビ・サコ学長

 京都精華大には公募に応じて2001年専任講師に採用された。「国際性と多様性を重んじる大学の校風が自分に合っている」と水を得た魚のように活躍した。教授、学部長ととんとん拍子に進み、昨年の学長選挙は、サコ氏を含め3人の候補者で争われ、当選した。「僅差だ、キンサ…」。こういうあけっぴろげな性格が学内の人気を得たようだ。

 フランス語、英語、中国語を流ちょうに操る。「私にとって言葉は生きるための手段。必死にやればどんな言語も習得できる」「マリは文字のない伝承文化の国だから耳で聞いて覚えるのに慣れているのかも…」。02年に日本国籍を取得した。中国時代に知り合い、日本で再会し、結婚した千賀子夫人との間に2人の子どもがいる。

お寺は地域活動のサポート役

 夏の送り火で有名な大文字山の山麓にたたずむ法然院(同市左京区)。浄土宗の開祖、法然上人が修業した地で知られ、約800年の歴史を持つ。三十一代貫主、梶田真章住職(62)は年間150回以上講話するなど布教活動に励む一方、環境問題にも強い関心を寄せる。

 広大な境内を取り囲むうっそうと茂った森にはオオタカ、ムササビなどが飛来し、自然環境を考えるフィールドとしては最適だ。1993年、敷地内に「法然院森のセンター」を開設した。季節ごとのテーマで自然観察したり、暮らしと文化に触れるエコ・ツアーや、子ども向けの環境学習「森の子クラブ」も立ち上げた。

法然院の三十一代貫主、梶田真章さん

 樹齢200~300年の古木が混じる森だけに今年9月の台風21号では100本以上の樹木が倒れる大きな被害を受けた。その片付けや復旧作業に200人を超えるボランティアが参加したのもこれまでのお寺と地域との連帯を深める活動があればこそだろう。

 寺院の施設を多目的ホールのように各種催しの会場に提供しているのも大きな特徴だ。絵画、写真の展示会には講堂、コンサートやシンポジウムなどのイベントには本堂、茶話会、落語向けには日本間の方丈(ほうじょう)を使用する。「お寺は先祖供養の場だけでない。地域社会に開かれた拠点であるべきだ」というのが梶田貫主の考え方だ。

京菓子のこころ

 生菓子作りの実演を初めて見た。ゴルフボールより少し小さめの丸い小豆あんの回りに白、赤、青などの菓片を盛り付け、あっという間に出来上がる。「きんとん」の一種であるこの生菓子はチアガールが振るポンポンのようでひらひらに当たる菓片もすべてあんでできている。

 老舗京菓子「末富」(同市下京区)の3代目、山口富蔵さんの81歳と思えない鮮やかな手さばきだ。

老舗京菓子「末富」の3代目、山口富蔵さん

 「あんは菓子の命」という。粒の選別から炊き上げ、つぶし、練りなどに半日を費やす。ひと晩寝かす必要もあるので二日掛かりだ。このためあんの専門業者から仕入れる向きが増えているが断固、自家製を守っている。その作業工程は企業秘密という。

 末富は華道家元、神社仏閣など日本の真髄を体現する得意先が多いだけにそれにふさわしい立ち居振る舞いが要求される。菓子作りにも日本の心がにじみ出る。「目で見て色を楽しみ、余韻のある味わい、ネーミングも耳に心地良く、さらに季節の移ろいや提供する場所などを吟味して作るのが京菓子のこころでんな…」(山口さん)

南座の再開

 大規模改修工事のため16年初めから休業していた南座(同市東山区)が11月1日ほぼ3年ぶりに再開した。リニューアルは耐震性能向上を中心に鉄骨を補強したり、屋根瓦の軽量化や、壁を厚くし、窓の強化も図った。今、問題になっている免震、制振装置は採用していない。設備面ではエレベーターの新設や照明器具類の全面LED(発光ダイオード)化、座席も10席増やし1088席とした。400年の歴史を有する日本最古の劇場だけに伝統と最新技術の融合に留意したのが特徴。

大改修を終え、再開した京都・南座

 例年12月に始まる「吉例顔見世興行」は再開を記念して1カ月早め11月と12月の2カ月連続になる。その興行期間中、松本白鸚ら親子3代の襲名披露も行われる。

(ジャーナリスト 前川芳一)

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