【コラム・一粒の豆から】この場所は何かの導きか

 こんにちは、京都市の寂れた商店街の一角でコーヒー焙煎店「Quadrifoglio」(クアドリフォリオ、イタリア語で四つ葉のクローバーの意)を営んでいる山口義夫です。

 第4回は、この店の場所を現在地(京都市下京区西七条北東野町)にした経緯と、その後のお話をします。第3回=9月18日、「長い、長いトンネルの先に…」はこちら

 お店をつくろうと決め、具体的に動きだしました。当時、妻は仕事をしていたので、まずは、独りで立ち上げようと考え、店舗探しを始めました。

 今まで頭の中でボヤっと思い描いていたこととは異なり、実際に店舗を探してみると、なかなか自分の条件に合う物件は出てきません。むしろ、自分自身の考えの甘さを突き付けられたような感じでした。

 さらに、妻の通勤や私の通いやすさなどを考えると、店の立地条件を、自宅の近くにする必要があると、2人で近場をウロウロと探し回ることとなりました。そんな時、知り合いの工務店から、ここはどうか、と案内された場所と、妻が「少し気になる」と言っていた場所が重なりました。それが現在の場所です。

 不動産契約を決めてから、ここの商店街の寂れぶりには正直、ビックリしました。昔のように、商店街を歩くのにも困るほどのにぎわいはないにしても、これほど「寂しい」状態とは予想していませんでした。そうは感じても、他に候補となる物件もありませんでした。思えば、これが新たな苦労の始まりでした。

 いよいよ、店の内装工事が進んでいきます。店内のつくりは、普通の形とは少し異なっていました。実は、私がウィルチェアー(車いす)を使用しているため、それに合せて作業台の高さや幅を決める必要があったからです。通常の形より物の配置が難しく、いろいろと置きたかったのですが、物理的に設置できませんでした。ただ、仕事をしている妻には収入があり、自分が目標とするコーヒー豆の販売をゆっくり拡大していけばいい、と考えていたので、それほどの不安はないと思っていました。

 店を始める当初は、私1人で経営し、妻は勤めで収入を得るという作戦で考えていました。着工後、その計画はもろくも崩れてしまいました。突然、妻の会社でごたごたがあり、着工したその年の年末に会社移籍の話が持ち上がりました。正月をはさむ、有無を言わせぬ異動のやり方に妻が反発し、結局、退社することになってしまいました。

 妻が辞めると分かっていれば、店舗についてはもっと違う、もう少し遠い場所でもよかったのに…、と思っても、「時すでに遅し」でした。結局、この場所で私と妻の2人で、コーヒー焙煎、販売をスタートすることになりました。そのため、店内の動線を確保する工事にも影響が出ることになりました。

 と言うのも、当初の「私1人で経営をする」という計画を前提に、ウィルチェアーに適した高さや移動動線を考慮した内装工事が進みつつありました。そこで、2人で店を切り盛りできるような配置を探りながら、工事の変更をしました。やがて内装工事が完成し、焙煎機の移設設置が完了し、静かに開店の日を迎えました。2013年3月のことでした。

筆者

 新規開店したにもかかわらず、PRもせず、財務面など経営のことも詳しくないままのスタートでした。売り上げはなかなか上がらず、低空飛行の経営状態が続きました。やはり、この場所が問題だったのか、と葛藤の日々が続きました。

 一方で、ここで営業を始めたことが、何かの導きなのかと思うこともあります。それは、夫婦二人三脚で営業を始める方向に進んだことと、この場所だからこそ出会えた人々の存在があるからです。そして、真摯にコーヒーに向き合う時間を与えられたことも大きな要因です。

妻と筆者

 最近は店の前を通る人影もさらに少なくなりつつあります。しかしながら、このままの状態を維持するわけにはいかない時期に来ているのも事実だと自覚します。開店から約5年たつ今でも、表を走るバスの中から、私の店を見つけてやって来られた、とおっしゃるお客さまもおられ、店のアピールをもっとやる必要性を痛感します。現在、ますはホームページとネット販売の整備を進めています。近く、ホームページのリニューアルをしますので、完成しましたら、のぞいてみてください。

【Quadrifoglioの今月のオススメ】

 今回はマンデリンです。聞き覚えのある名前かと思いますが、インドネシア産コーヒーです。100グラム800円。店内では1杯650円。

 名前は、インドネシアマンデリン・タノバタックです。マンデリンは、地域独特のスマトラ式と言われる精製法を取っています。焙煎は、シティローストを少し進めた位置に仕上げました。ドライフルーツやニッキのような香り 滑らかで強いボディーの心地よい飲み心地です。軽いカカオ風味とアプリコットやプラムを思わせる甘味と酸味のアフターテイストも与えてくれます。

インドネシアマンデリン・タノバタック

【筆者略歴】

山口義夫(やまぐち・よしお) Quadrifoglio(京都市下京区西七条北東野町27-2、電話075-311-6781)経営。http://www.quadrifoglio-coffee.com/

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