「将来は寿司を握る料理人になりたい」 子どもの障害者を対象に料理教室

自立した生活に必要となってくるのが、料理の基本的な知識や技術の習得。独身世帯が増え、料理教室は盛況だが、これまでは健常者対象のものが多かった。最近は自治体主催の大人の障害者向け料理教室が開かれているが、料理をしない家庭が増えている昨今、障害を持つ子どもにとっても、料理の基本を気軽に学べる機会が必要だといわれる。

JA全農が東京都内で8月30日に開いた、小中高の障害児童生徒を対象にした「全農みんなの子ども料理教室」は、そんな機会の一つとして注目される。

小学2年生から高校3年生までの知的障害者13人が参加。専門の調理スタッフから、トマトチーズチキンやいんげんのカツオ煮、アスパラとウインナーの卵炒めなど4品を教えてもらった。

各自できる範囲で、包丁を使って食材を切ったり、火加減を見ながら卵を炒めたり、色合いを考え弁当箱や大皿へ盛り付けることなども経験した。初対面の調理スタッフとのふれあいも自立した生活へ向けた社会経験を積む貴重な機会となっている。

JA全農がこの取り組みを始めたのは2年前の2016年。初回は知的障害者5人が参加。昨年は2回、今年は3回と開催回数を徐々に増やしている。各回の参加者数も右肩上がりで増加。手探り状態で始めた教室だったが、障害を持つ小学生から高校生を対象とする貴重な料理教室の一つとして着実に評価を高めている。

この料理教室を企画したJA全農の田久保美由紀さんは、「長年続けている子ども向けの料理教室に時折、障害をお持ちのお子さんが参加されることがあるんですが、他の大勢の子との兼ね合いから、障害者のお子さんのペースに合わせてしっかり教えてあげることができなかったという内心忸怩(じくじ)たるものがずっとあった」と話す。障害児童生徒対象の料理教室が少ないことも分かり「やる意義がある」と開催に踏み切った、という。

障害児童らの学童保育的な事業を実施している社会福祉法人「新宿あした会」(東京)の協力が得られたことも背中を押してくれた。田久保さんは「あした会の職員の方が一緒に参加してくれるので、安心して始めることができました。職員の方も『料理教室では、普段接しているだけでは分からなかった子どもたちの一面、例えば責任感を持ってこつこつとやり遂げる、下の子の面倒をよく見る、などに気付かされ良かった』と子どもたちの成長を喜んでいただくこともあります」と語る。

弁当箱にご飯を詰める子供たち。

さらに田久保さんは「いまは知的障害者の参加が中心だが、受け入れ体制を整え、今後は身体障害者の児童生徒も参加できるような教室にしていけたら」と教室の将来に思いをはせる。

30日の料理教室の参加者の中には「将来は寿司を握る料理人になりたい」と話す高校2年の男子生徒がいた。誰に言われるともなく、率先して弟、妹のような年下の参加者におかずを小分けしてあげるなど、かいがいしく動き回っていた。男子生徒は「寿司は握れますが、今日はちょっと苦労しました。でも面白かった」とはにかんだ笑顔を見せていた。

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